第3回大会シンポジウム 『見過ごされやすい子どものmaltreatmentとその対応』
座長: ・杉山登志郎(あいち小児保健医療総合センター) ・宮本信也(筑波大学心身障害学系)
【演題】 ・ 「ネグレクトに関するアセスメントスケールの試み」 三上邦彦(仙台市精神保健福祉総合センター) ・ 「発達障害児におけるmaltreatmentをどの様に防ぐか」 杉山登志郎(あいち小児保健医療総合センター)ほか ・ 「体罰によってPTSD症状が出現したと考えられる症例の治療過程」 大江美佐里(久留米大学医学部精神神経科)ほか ・ 「施設における子どもへのmaltreatmentとその対応」 宮本信也(筑波大学心身障害学系)
■総評: 杉山登志郎(あいち小児保健医療総合センター) 子ども虐待に関しては、身体的虐待を中心として啓発が進んできた。しかしながら虐待をmaltreatmentという視点で とらえたとき、見過ごされやすい問題が未だに多く残されている。このシンポジウムではこれらの見過ごされやすい子どものmaltreatmentを取り上げ、臨床的な視点から検討を行った。
三上邦彦(仙台市精神保健福祉センター)「ネグレクトに関するアセスメントスケールの試み」では、ネグレクトを包括的にとらえるために、ネグレクト状況に評価尺度をつけたNegrect Assessment Scale for Children's(NASC)が報告された。NASCでは1,身体的ネグレクト、2,医療的ネグレクト、3,保護・監督4,情緒的ネグレクト、5,教育的ネグレクト、6,放棄の6つに関してそれぞれ、乳児期(0−1歳;教育的ネグレクトを含まず)幼児期(1−6歳)児童期(6−12歳)の3つの発達段階に分け、具体的なネグレクト項目を抽出したものである。さらにエクセルを用いて評価と直ちにチャートが描けるよう工夫を行った。ネグレクトに関する包括的な評価方法は乏しく、新たな評価方法として有意義と考えられる。
杉山登志郎、海野千畝子(あいち小児保健医療総合センター)「発達障害におけるmaltreatmentをどう防ぐか」では、あいち小児保健医療総合センターにおける被虐待児の統計資料が報告された。あいち小児センター心療科を受診した被虐待児の53パーセント、心療科病棟に入院した被虐待児の65パーセントが何らかの発達障害の診断が可能であった。この中には、虐待系の多動が含まれるが、この様に子ども虐待と発達障害が密接に絡み合うことが明らかとなった。さらにその中に、親子共に発達障害と診断される症例が存在した。これらの事例については母子平行した治療が有効であった。発達障害と虐待の関係が正面から取り上げられた点において重要な提起を含む報告と考えられた。
大江美佐里、前田正治、前田久雄(久留米大学医学部精神科)は教師の体罰によってPTSD症状を呈し、著しい適応障害を来すに到った症例について、主として治療的な視点から報告がなされた。この報告では、これまで取り上げられることが極めて少なかった、教育現場におけるmaltreatmentの問題が扱われた。さらに、この様な事例において、子どもの安全を確保しつつ教育を損なわず治療を行う難しさが浮き彫りになった。
宮本信也(筑波大学心身障害系)「施設における子どものmaltreatment」では、施設内体罰が明らかとなり、施設における変革の中で、入所児、指導スタッフ共に大きな混乱が生じた状況を呈するに到った養護施設への介入の経験から、施設内虐待からの回復の過程を詳細に示した。第一段階は施設内虐待の停止、第二段階はそれによって一気に爆発する子ども達への問題行動への対応、第三段階は、子どもの心理治療と職員の自信回復である。この報告も、現実には多く存在するものの、これまで取り上げられることが極めて少ない問題に踏み込んだ点で大きな意義があると考えられた。
この様に、このシンポジウムにおいては、いずれも子どもの見逃されやすいmaltreatmentを正面から取り組んだ実践的研究が報告され、討論がなされた。どのテーマも今後継続的な取り組みが必要とされる論点である。
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