どおしよお・・・・・。 でも、渡さなきゃ、可憐達が怖いしなぁ。 それに、せっかく徹夜したし・・・・。 あぁ、でも! こんなの渡せないよお。 きっと嫌味の一つや二つや三つや四つ・・・・・・・・。 はぁ・・・やっぱ、無理だよなぁ。
でもなぁ・・・。
「悠理」 「わ、わ、可憐!」 「あんたまだ迷ってんの?」 「だって・・・」 やっぱさぁ、あたいが"チョコ"なんて、ガラじゃないし。 それに清四郎、なんか、昨日から怒ってるし。 今だって、野梨子と・・・・。 昨日、野梨子は清四郎とはただの幼馴染って言ったけど、でも清四郎の方は・・・・。
「あたしだったら、すっごく嬉しいわよ。そのケーキ貰えたら。だって、完璧の出来なんですもの」 「これの何処が完璧だってんだよ。焦げちゃったし、形も変だし」 「違うわよ。見た目じゃなくて、心のこもり具合が完璧だって事。あいつに食べてもらいたくて、徹夜してまで頑張ったんだから。違う?」 可憐・・・・。
「バーンといきなさい、バーンっと!なんかあったらあたしが責任とってあげるわよ♪」 「他人事だと思ってぇ〜・・・・」 でも、 「ありがと」 「・・・・うん」
「じゃ、あたし帰るから」 「え!」 「美童も今日はデートでもう来ないし、魅録はあたしが連れて出るから、後はしっかりやんなさい」 「な、なに言ってんだよお」 そ、そんな、急になんて無理だよお。 うわー!うわー! 「悠理。渡さないんなら渡さないで良いから、せめて普段通りにしなさい。今のあんた、あからさまにアイツの事避けてて不自然よ」 「嘘。マジ・・・?」 あたい、かなり頑張って普段どおりにしてたつもりだったのに・・・・。
「じゃあね。―――魅録、あんたまだ帰らないの〜」 「お?お、おぉ、帰る帰る」
って、おい!お前ら! 「じゃあね」じゃない!「帰る帰る」じゃない! コラ、魅録!お前も知ってんだな! この薄情もの〜〜〜!
うっわー・・・・、どうしよう。
■ 清四郎。2月13日(金)−2 あいつ等に逃げられて、どうしていいのかわからなくてあたいも逃げようとして、捕まえられたと思ったら、抱きしめられてた。 体中がドキドキうるさくて、顔なんて見られたくないぐらい熱くてきっと真っ赤で。 でも髪にあいつの重みを感じると、少し、体から力が抜けた。
やっぱり、暖かい。 それに、段々、力が抜けてくる。 ちょっとだけ、凭れちゃっても・・?なんて、思ってしまう。
きっと今なら、大丈夫かもしれない。 どうして、こうしてくれるのかわからないけど、でも。
だってコイツ、そんなに器用じゃないもん。 他の誰かが頭とか心の中にいるのに・・・、なんてできっこない。 だから、大丈夫。 今は、あたいの事、考えてくれてる・・・ハズ。
「清四郎」 「ん?」 ほら、声だってこんなに優しい。 「ケーキ、食う?」 「ハイ?」
"ハイ?"って・・・。 そりゃ、いきなりだったけど。 でもいいや。 まだコイツ、あたいの事、離さないでいてくれてるし。
「な、食う?」 これで「いらない」って言われたら、あたい、もう立ち直れないかも。 こんな風に抱きしめたクセに、そりゃないよ、って。 でも、やっぱり大丈夫そう、みたいだな。
「あるんですか?ケーキなんて」
あるよ、とっておきのが。可憐のお墨付きのがさ。 見た目も味も自信ないけど、な。
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見た目も味も、全然オッケーだって。 ぎゅっと抱きしめてくれた後、ふたりで食べたチョコケーキ、「来年も作ってくださいね」だってさ。
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