+++清四郎氏の場合+++


2004年2月〜3月の日記
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* 2004年2月1日(日) 2月ですか・・・
* 2004年2月2日(月) なんなんだ。
* 2004年2月3日(火) イヤ別に僕は。
* 2004年2月4日(水) ほら。そうでしょう。
* 2004年2月5日(木) 弱ったな・・・
* 2004年2月6日(金) 今日は魅録ですか。
* 2004年2月7日(土) どうしたっていうんだ。
* 2004年2月8日(日) さて、来てはみましたが・・・
* 2004年2月9日(月) とりあえず。
* 2004年2月10日(火) さぁて。
* 2004年2月11日(水) ホント気まぐれですねぇ。
* 2004年2月12日(木) 面白くない。
* 2004年2月13日(金) 泣いたの・・か?
* 2004年2月13日(金) 悠理。
* 2004年2月14日(土) 今日は。
* 2004年2月15日(日) 僕も結構単純だな。
* 2004年2月16日(月) うーむ・・・・。
* 2004年2月17日(火) 結局。
* 2004年2月18日(水) フム。
* 2004年2月19日(木) ・・・誰もいませんね、っと。
* 2004年2月19日(木) やっぱり。
* 2004年2月20日(金) なんだか曇ってきてるな。
* 2004年2月21日(土) 日頃の行いですね。
* 2004年2月22日(日) フン。なかなか良く撮れて。
* 2004年2月23日(月) 春ですねぇ。
* 2004年2月24日(火) 今に始まった事じゃないが。
* 2004年2月25日(水) 僕だって男なんですけどねぇ。
* 2004年2月26日(木) 予定変更か。
* 2004年2月27日(金) 冗談じゃない。
* 2004年2月28日(土) 疲れた・・・・。
* 2004年2月29日(日) いるかな。
* 2004年2月29日(日) 愛してる。
* 2004年3月1日(月) フフフン♪
* 2004年3月2日(火) 良かったじゃないですか。
* 2004年3月3日(水) ん?
* 2004年3月4日(木) そうか・・・。
* 2004年3月5日(金) う〜む。
* 2004年3月6日(土) なかなか。
* 2004年3月7日(日) やれやれ・・・。
* 2004年3月8日(月) 治りませんなぁ。
* 2004年3月9日(火) 土曜ですか。
* 2004年3月10日(水) 予想通り。
* 2004年3月11日(木) 買い物ですか。
* 2004年3月12日(金) あぁ、みっともない。
* 2004年3月13日(土) 声だけでも聞きたいですねぇ。
* 2004年3月14日(日) 敵わないな、絶対。

2月ですか・・・
早いもんですねぇ、ついこの間正月が来た処だと思ったんだが。
そう言えば2月と言えばまたバレンタインがあるのか。
今年も悠理から上手いこと取り上げないとな。
あのバカ、放っといたら一日で全部食べてしまいかねないからな。

あいつは大体、体に対して無頓着すぎるんだ。
いくらバケモノ並の体力だからって、体を作ってる「成分」は他の人間と同じな筈なんだ。
それなのに「あたいは大丈夫だ!その辺の奴等と一緒にするな!」だって?
冗談じゃない。その辺の奴等は一日に20個も30個もケロリとした顔でチョコなんて食べませんよ。

・・・・そういう事じゃないな。


とにかく。今年も個数制限だ。
本当は、誰からも受け取らせない、食べさせない。が一番なんですけどねぇ。
でもあんなに嬉しそうな顔して食べられると、「食べるな」とはとてもじゃないが、言えないな。
はぁ、僕も大概甘いですよね。

2004年2月1日(日) No.4

なんなんだ。
朝から野梨子の様子がおかしいと思っていたら、可憐まで。
なんなんだ、一体。人の顔を見てニヤついたり、妙にご機嫌だったり。
なにが「べっつに〜♪」なんですか。あからさまに何か企んでいるような顔をして。
大体、気を付けて見てみると、魅録と美童もどこかおかしいな・・・。
あいつ等一体何を企んでいるんだ?

それにしても・・・。
悠理のヤツもなにか変なんですよねぇ。
僕に対してだけ機嫌が悪い。
なにか、あいつを怒らせるようなことでもしたか・・・?
2004年2月2日(月) No.5

イヤ別に僕は。
「あいつ等3人で買い物行くんだってさ。授業終わるなり、悠理のヤツ急いで教室出て行ったぞ」
だから、別に悠理を探していたわけじゃありませんよ。

生徒会室に入るなり、「悠理ならいないぜ」って。
僕はただ、珍しく女性陣が誰ひとりとしていないから、不思議に思っただけですよ。

しかし、そうですか、買い物ですか。
これはまたそこら中で売ってるチョコを買い漁ってるんでしょうねぇ。
食べ物が係ると、いくら可憐と野梨子でも止めるのは難しいでしょうし。
はぁ、せっかく当日に個数制限してもこれじゃぁ意味がありませんなぁ。
でも店の人はびっくりするでしょうねぇ。いくら義理を配る人間でも流石に悠理ほどの買い方はしないでしょうし。
あいつのことだ、きっと目につくヤツ一通りは買いそうだからな。
しかもそれを全部自分で食べるというんだから、あの食欲には呆れるのを通り越して尊敬しますよ。

ホントに。間違って好きな男でも出来れば、多少は控えるようにでもなるんでしょうけどねぇ。

「なぁ、清四郎」
「なんですか?」
「あいつらなに買いに行ったか知ってるか?」
「さぁ。買い物に行くことすらさっき聞いたぐらいですから」
「バレンタインのチョコの材料なんだって。今年は悠理も作るらしいよ」
・・・・え?
「自分のでも作る気ですか、あいつは」
「違うみたいだよ、ちゃんと別にいるんだって、渡す人」

最近こいつ等の様子がおかしいとは思ってはいたが、二人して何処かで頭でも打ったのか?
「何を、バカなことを」
「ま、信じないならそれでも良いけどな」

信じられるわけないだろう。あいつに手作りのチョコを渡す相手がいるだなんて。
全く何を言ってるんだか。

冗談ならもっと笑えるやつにして貰いたいもんですね。



2004年2月3日(火) No.6

ほら。そうでしょう。
やっぱりね。
悠理に手作りチョコを渡したい男なんている訳ないんだ。

「大体、昨日は別に買い物に行ったわけじゃないぞ。新しく出来たカフェがあるって言うから。なーそうだよな」
えぇ、そうよ。なんて、可憐と野梨子が頷いて。
ふん、ですよね。
他の二人ならともかく、悠理が男の為にチョコを作るだなんて、どう考えてもありえませんよ。
全く、一時でも信じてしまった僕がバカでしたよ。
おかげで論文がちっとも進まなかったじゃないか。
今夜こそ、仕上げなければ。
って・・・。僕は何をこんなにホッとしてるんだ。
イヤ、そもそも、どうしてそんなに気なっていたんだ。

あぁ、そうか。気になるのは別に不思議じゃありませんよね。何と言っても悠理なんですし。
悠理が手作りチョコを上げたい男がいるだなんて、誰でも気になりますよね。
こんな食い意地だけのヤツに、だなんて。
ハイハイ。あぁ、そうだ。そういう事だ。

なんて考えてるうちに、いつのまにかケーキが無くなっている。
向かいに座る魅録の視線を追うと、僕の隣で既に半分になっていた。

−−−−−−−−−−

って、またほらそんな所にクリーム付けて。いっぺんに頬張るからだ。
お前には頬にも口があるのか?
「悠理、誰も取りませんからゆっくり食べたらどうです?」
「これがあたいは普通なの〜」
ハイそうですか。
「こんなトコにクリーム付けて食べるが普通なんですか」
別にケーキを食べたかったわけじゃないが、味見ぐらいさせて貰ってもバチは当りませんよね。

・・・。結構甘いですね。


2004年2月4日(水) No.7

弱ったな・・・
「あの・・・、ずっと好きだったんです!」

と、言われましても・・・。

「やっぱり、白鹿様とお付き合いなさってるんですか?」

そんな涙眼で見ないでくださいよ。おまけに誤解ですし。
「野梨子はただの友人ですよ」
「じゃぁ!」
って、だからと言って、あなたと「ハイ、そうですか」と付き合うとは言ってませんよ。

「申し訳ないですけど・・・」
ココはいつものようにお断りし・・・・・悠理?!

「剣菱様・・・」
「ご、ゴメン。お前が見えたから・・・え〜、その〜・・・・お、お邪魔さまっ」
「あっ!悠理!」

――追いかけなければ

え?
僕は、今・・・・。

―――違う。彼女とは何でもナイ
誤解を解かなければ。

・・・・?どうして。

気が付いたら走り出していた。

−−−−−−−−−−−

「悠理!」

こいつは一体何処まで逃げる気だったんだ。
やっと見つけたと思ったら、もう体育館の裏じゃないですか。スタート地点は、図書室前ですよ?
しかも。

「どうして泣いてるんですか・・・」
「知るか!」

知るかって、なんで僕が怒られるんです?
でも良かった捕まえられて。
これで誤解を解くことが・・・って誤解ってなんですか。
誤解も何も、さっきのはどう見ても告白されてるトコで、あぁ、そういえば断るのが中途半端になっていたな。
イヤ、まぁそれはいいとして・・・・だから誤解を。

「ケーキ、食おうと思ったんだ。昨日の」
え?
「昨日あたいが食っちゃったから」

その箱、ケーキが入ってたんですか。
でもさっき何度も落としてませんでしたか?
って、え?
「食っちゃった"から"?」

「僕の、だったんですか・・・・?」
「美味かったし。・・・お前、昨日あたいの頬っぺたの食べたし。食いたかったのかと思って。・・・だから、一緒に食べようと思って・・・」

・・・・・・・。
ふ。こいつは、ホントに―――。

「丁度お断りするところだったんですよ。だから悠理が来てくれて良かった」
「・・・うん」
「ケーキ。貰ってもいいですか?」
「でも、きっとぐちゃぐちゃだぞ?」
「見た目より、味でしょ?」
あの時も思ったが、こうしてみるとこいつは本当に小さい。
僕の身体にすっぽり収まってしまうんだから。
これでちゃんと抱きしめれば、もっとこの身体は僕で隠れてしまうんでしょうねぇ。


2004年2月5日(木) No.8

今日は魅録ですか。
「次は僕かなぁ〜。いやぁ、困っちゃうよね〜。」

"抜け駆け"ね。
バレンタインに告白されるのはよくあったが、その前にだなんて、不思議に思ってたんですよ。
女性と言うのは、なるほど色々あるものなんですなぁ。

で、今日はその抜け駆けした女の子が魅録を呼び出してるのか。
そういや、悠理もいないな。
もしかして、あいつまた妙なタイミングでその場に居合わせるんじゃないだろうな。
あいつならやりかねない・・・。

でもそうするとまた、あいつは逃げるんだろうか。
そしてまた・・・・、泣くんだろうか。
魅録なら追いかけるでしょう。そして慰める・・・・・昨日の僕のように?
・・・・・・・・・。
いや、だからと言って僕には関係のない事なんですがね。

・・・・・。
・・・・・・・・。

「なによ、清四郎。難しい顔しちゃって。そんなしかめっ面してると、皺になるわよ」
「何か気になることでもありますの?」
「いや別に。それにしかめっ面なんてしてませんよ。これが元々の顔です」

でもしかし。
なんだか気分が悪いのは確かだ。
今日はもう帰るとしますかね。



2004年2月6日(金) No.9

どうしたっていうんだ。
結局昨日アレから、悠理と魅録は戻ってきたんだろうか。

っと、まただ。
どうしたっていうんだ。昨日からずっとこの調子じゃないか。
魅録と悠理がつるんでいるのはいつもの事じゃないか。
なのに、何が、そんなに気になるっていうんだ。

気に入らないのか?あの二人が一緒にいる事が。

まさか!
・・・しかし、それじゃあ何故、こんなに気にしているというんだ。
しかも、ずっと気分が悪い。

あの想像は、想像でしかないはずだ。
いや、想像でなくそれが事実だったとしても僕には関係のないことだ。

一体僕はどうしたっていうんだ。

2004年2月7日(土) No.10

さて、来てはみましたが・・・
いつまでも、悩んでいるのは性に合わなくて、「家庭教師に」なんて来てみたはいいが、さて、どうやって切り出せばいいモノか。
大体にして、自分自身がどうしてココまで気になるかがわからないんだ。
だがこのまま何もしないでいれば、恐らく今夜も眠れないのだろうし。
全く、僕はどうしてしまったんだろうか。

それにしても、さっきからコイツ本当に何も聞いていないな。
そりゃせっかくの日曜日に勉強しろだなんて、なにも理由が思いつかなかったとは言え、僕も悪い事したなとは思うけど。
さっきからなんだか上の空だし、ソワソワと落ち着きはないし・・・。
もしかして、これから魅録とでも約束があるんだろうか。
だからこんなに落ち着きがないのか?

「悠理、聞いてるんですか?」
「え、あ、うん、聞いてる聞いてる」
なんて嘘、大嘘だ。
こいつの顔は、今始めて僕の声が耳に入ったという感じだ。
やっぱり何か別のことを考えているのか。
別の誰かのことを・・・。

「悠理」
「え。な、何」

―――やめるなら今だ。適当に話を逸らせ。

・・・・何を。どうしてやめるんだ。
「一昨日のことなんだが・・・」
「え」
やっぱり・・反応がありましたか。
「魅録が告白されたの、知ってますか」

訊きたくないのか?僕は。
どうしてこんな遠まわしな言い方をしているんだ。
ハッキリ訊けばいいことだろう。
そう、もうハッキリさせてしまえばイイ。

「あの日、悠理、部室に来なかったでしょう。だからまた僕の時みたいに、その場に居合わせたんじゃないかと思ってね」

目は口ほどにものを言い、ってことですかね。
眼だけどころか、顔全体ですがね、こいつの場合。
一気に緩みはじめたこの表情が、僕の想像を肯定していると言うことでしょうな。
「・・・・やっぱり、一緒だったんですか」
そして

「また、泣いたんですか」
「誰が?」

誤魔化す気ですか。そうですか。
まだ、知られたくないってことですか、魅録との事。
照れてるだけかもしれないですけど、随分薄情ですねぇ。
「誰がって、悠理がですよ。魅録が告白されている所に居合わせて、また、驚いて泣いてしまったんじゃないですか、と訊いてるんです」
「なんであたいが泣くんだよ、魅録が告られたからって」
おや?どういうことだ。
この表情、嘘をついているようには見えない・・・。
「だって悠理、僕の時泣いたじゃないですか」
「あ、アレはあたいだってよくわかんないって言ったろ。大体なぁ、魅録が告られたのだって、あたい今初めて聞いたんだぞ」
「え?」
まさか。
百歩譲ってあの日悠理があの場に居合わせなかったとしよう。だが、その後、一緒だったんじゃないのか。だからこそ、さっき何か思い出して、微笑っていたんだろう。

「あたい一昨日は、先公に捕まってたんだよ。お前が、あの日、追っかけてくるから・・・」
「は?」
「お前と鬼ごっこしてたって、怒られてたの!」
怒られてた?魅録と一緒だったんじゃないのか?
だって僕は何も言われてないぞ。
「怒られたって・・・。アレで、ですか?フム、僕は何も言われてませんけどねぇ」
「やっぱり。ぜーったい、そうだと思ったんだ。だってあいつ、お前の事贔屓してるもん」
「あいつって、だれです?」
「英語の竹桜」
・・・・あぁ、納得しました。あの化粧おばさん、ね。
確かにあの先生なら悠理だけを捕まえて注意するなんて、しそうな事だな。
どういうわけか、悠理のことを目の敵にしている節がありますからねぇ・・。

イヤ、それにしても、
「そうですか、怒られてたんですか」
なんだか、わかってみれば馬鹿馬鹿しいと言うか、悠理らしいと言うか。
そうですか、そうですか♪

でもまぁ、とにかくおかげで今日こそゆっくり眠れそうだな。
っとその前に、どうやら気が晴れて浮かれてしまったらしい。その所為で機嫌が悪くなってしまったコイツをなんとかしないとね。


2004年2月8日(日) No.11

とりあえず。
今日は出来るだけ逆らわないようにしないとな。
でもどうしても、余計な事言ってしまうんですよねぇ・・・。
ふぅ。でも仕方ありませんな、今日ばかりは。
昨日怒らせてしまったし、なんだか最近ストレスが堪っているとも言っていたし。
映画に付き合うだけで、気が晴れるというのならね。
僕もこの際、楽しみましょうか。

確か始まるのは7時半からだと言ってましたね。
何処かでまず食事をして、それから少しブラブラしたら丁度いい時間ですかね。
あの辺で悠理が満足で来そうな店・・・・あぁ、あそこがあったな。
後で予約入れときますか。

それにしても、3時間半とか言ってましたか。
えらく長いな・・。
あいつ、寝てしまうんじゃないか?



2004年2月9日(月) No.12

さぁて。
「ねぇ、ねぇ、昨日の映画どうだった?面白かった?」
「う、うん。面白かったぞ!すっごい迫力だったし。な、清四郎?」
「えぇ、結構面白かったですよ」

なんて。
クックックック。
悠理、顔に出てるぞ。お前は本当に嘘がつけないな。
でもまぁ、約束ですから?
一応僕は黙っててあげますよ。
3時間半の内、2時間半は夢の中だったって事。

それにしても・・・。
この様子だと、やっぱり悠理は一度も起きてはいないらしいな。
よかった。
気がついたら僕も悠理の頭を枕に寝てしまってましたからねぇ・・・。
こんな事バレたらなに言われるかわかったもんじゃない。
大体悠理があんなに気持良さそうに寝るからこっちまで眠くなるんですよねぇ。
最近なんだか寝不足気味でしたし。
ま、でもおかげで何だか気持ちよく寝れた気がしますよ。

さぁて、「みんなに黙ってる代わり」、何をして貰いましょうかね♪


2004年2月10日(火) No.13

ホント気まぐれですねぇ。
一体どうしたって言うんだか。
さっきからちっとも料理が減らないじゃないか。
味は結構いいと思うんですけどねぇ・・・。
何か悠理の嫌いな物でも入っていたんだろうか。
・・・・こいつ、うなぎの他に好き嫌いなんてありましたかね。

「どうしました?・・・それ、失敗でしたか?」
「え?」
「なんだかあまり進んでないみたいですけど」
「そ、そんなことないぞ」

って、本当に素直ですねぇ。
どこが「そんなことない」ですか。
一昨日とは全然違うじゃないですか。
「フム・・・一昨日の店の方が良かったですかね」

やっぱりそのようだな。
こんなに食事時に沈むとは。
しかしうなぎ以外で初めて見たな。悠理が食べれないものだなんて。
ま、うなぎ嫌いは僕にも責任がないとも言えないが・・・・。
でも今日の料理には"長くてにょろにょろした物"は入っていない筈なんですけどねぇ。
ま、とにかく失敗らしい。
代えてやりますか。

「手を付けてしまってますけど・・・ま、今更ですよね。僕達の間じゃ」

っと、これでもダメですか?
こっちのは確実に悠理が普段食べているようなモノなんだが。
・・・・もしかして、どこか体調でも悪いんだろうか。
でもココに来るまではいつも通りでしたよねぇ。

「悠理?」

・・・・・・・・。
この店が気に入らないんだろうか。
確かに、少し雰囲気が良すぎる感はありますからねぇ。
どちらかと言うと賑やかな方が好きな悠理には、やっぱり一昨日の店の方が楽なのかもしれないな。

「ふ〜・・・姉貴の言う事も当てになりませんね」
「へ?」
「ココ。姉貴が絶対、悠理も気に入るからって。一昨日の店の事話したらえらい剣幕で怒られましてね。でもま、僕もココ初めてだったんですけど、雰囲気いいし、なるほどな、って思ったんですけどね。やっぱり、お前はそういう事じゃないな」

ふっ、やっぱりその様だな。
コイツにこんな"女性受けするような雰囲気"なんて、必要ない。
何よりも「楽しい」ということが一番なんですから。
作られたモノではなく、自然に出来たその場のモノ。
悠理に小手先のモノは通用しないってことですね。

ってなんだ、急にニヤニヤしだしたぞ。
「一昨日の店も、ココも好きだぞ。そっちも美味しかったし、これも・・・・うん、旨いぞ」
「なんですか、さっきまでぼんやりしていたくせに」
でもま、やっぱりコイツは笑ってる顔の方がイイ。

「な、な、それよりお前それ、さっさと食えよお。映画始っちゃうだろ」
「まだ大丈夫ですよ。それより、今日はもう寝ないでくださいよ」
「お前に言われたくありませ〜ん」
本当に、さっきまでの杞憂がバカみたいですよ。
ククククク。
まぁでもイイか。


2004年2月11日(水) No.14

面白くない。
近寄るな。
触れるな。
見るんじゃない。

悠理のヤツ、昨日はあんなに可愛かったのに。
今日は無視ですか?

・・・・ちょっと待て。可愛い?悠理が?
僕は一体何を考えてるんだ。
いや、でも、確かに・・・・。

コラ魅録、それ以上悠理に触れるんじゃない。
悠理も笑うな。

って、だから。
・・・・。

冷静になりましょう、とりあえず。
・・・・。
・・・・・・・。

まずさっきの「悠理が可愛い」について。
悠理は・・・・。

これは後回しにしましょう。
次に・・・・・・。

なんだ。なんだか妙に腹立たしいな。

ふ〜・・・・。
最近こんなことばっかりだ。

ん?
っあ。アイツ・・・・。なんなんだ。
今、あからさまに眼を逸らしたな。
何か後ろ暗いことでもまたやったんじゃないだろうな。
しかし、昨日は結局寝ずに最後まで観ていたようだし、家まで送って行ったときも、特に変わった様子はなかった。
と言うことは、今日学校へ来てからということか?
それにしたって、一日避けられていた以外は・・・・。
そうだ、今日は何故か避けられている。
やっぱりアイツ、何かしてますね。
それとも僕が、何かやってしまったんだろうか・・・・。

・・・・あぁ、クソッ。
ホントに、なんだっていうんだ。



2004年2月12日(木) No.15

泣いたの・・か?
目が赤いな。
それに表情も、何処か無理をしている・・・。

今日はお前が待ちに待っていた日じゃないか。
それも明日が休みだから、例年より一日早いというのに。

何があったんだ。
昨日からろくに口もきかないし、本当に僕がなにかしたのか?

「清四郎、何か悩み事でもありますの?さっきから怖い顔して」
「あぁ、野梨子。いえ、別になにも?」
「そうですかしら」

そういえば、昨日野梨子が一緒だったはず。
何か知っているのか?

「昨日、何かあったんですか。悠理のヤツ、様子が変ですが」
「変ですかしら。私はそう思いませんけど」
「変ですよ。眼だって赤いし・・・」
なんだ・・・?野梨子の様子もおかしくないか?
何がそんなに、可笑しいんだ?

「何か、隠していませんか」
「気になるのでしたら、直接本人に聞いた方がいいのじゃありません?」

それは、そうなんですがね・・・・・。

「何をそんなに躊躇するのかわかりませんけど、もう少し、簡単に考えてみてはいかが?」
「どういう意味ですか?」
「いずれわかりますわよ。それじゃ、私今日は先に失礼しますわね」

簡単に・・・と言われても。
そうですね、とりあえず今わかっているのは・・・・。
悠理の様子がおかしい。
それも昨日から。
今日なんて、眼が赤くて元気がない。
そして、それが・・・・・・・・気になる。

気になって、仕方がない・・・・。


「じゃあね。―――魅録、あんたまだ帰らないの〜」
「お?お、おぉ、帰る帰る」

なんだ?魅録のヤツ。急に慌てて。
可憐も・・・。悠理と帰るんじゃないのか、さっきまでアイツの事、慰めていたように見えたが・・・。
しかし、ということはふたりきりですね。
どうせ美童は今日はもう来ないだろうし。

邪魔が入らないうちに、確かめますか。
あいつの、あんな表情の理由を。



2004年2月13日(金) No.16

悠理。
問い詰めようとして、逃げようとした腕を捕まえて、気がつけば抱きしめていた。
何の違和感もなくすっぽりと収まる悠理の身体は、いつか思ったように、やはり小さい。
そして、何故か安堵できる。
抵抗しないのをいい事に、更に、その柔らかな髪に顔を埋めた。

それで、避けていた理由を問いただしたい気持がなくなったと言えば嘘になる。
だが今こうしていられる事は、何事にも変えがたい。
だから今は何も言わずに、ただこうしていよう。
全く、エゴとしか言いようのない、自分勝手さだとは思うが。

恐らくこの感情は、・・・きっとそうなのだろう。
思えばずっと、悠理の周りに誰か男がいると思うことが腹立たしかった。
ずっと、悠理の笑顔を見たかった。

本当に、簡単なことだな。

――――こんなにも愛しい。


「・・・・しろ・・・」
「ん?」
不思議なほど大人しかった悠理が、僕の胸に顔を埋めたまま呼ぶ。
体を離してしまうのが惜しくて、抱きしめたまま、返事をした。

「ケーキ、食う?」
「ハイ?」

恐れていた事――拒絶――では、なさそうだ。
だが、いきなり「ケーキ、食う?」とは・・・。
いや、悠理なりの拒絶なのだろうか。拒絶と言うより、はぐらかす。
はぐらかして、何もなかったかのようにしようというのだろうか。

まさかな、こいつはイヤなら考えるより先に手か足が出るだろう。
・・・・・・出る、筈ですよね・・・・。

「な、食う?」
所在なさげに添えられていただけの悠理の手が、僕の制服をぎゅっと掴んだ。

「あるんですか?ケーキなんて」

こくんと頷いた悠理がその後出してきたモノと、「バレンタインだから」との真っ赤な顔での一言に、再度・・・いや先ほどよりずっときつく、抱きしめた。



2004年2月13日(金) No.17

今日は。
今頃、何してますかねぇ。
まぁ、まだこんな時間だし寝ているかもな。
昨日もかなり眠そうだったし。

そうだな・・・。
昼頃になったら電話して、ふたりで何処かに出かけようか。
それとも突然行って驚かすのも、いいかもしれないな。
さてじゃぁ何処に・・・

「―――しろ・・・・おい、清四郎!」
「え?」
「え?じゃないわい。なんじゃお前さっきからニタニタと気持ち悪い」
「失礼な。別にニタニタなんてませんよ」
まずい、顔に出ていたか・・・。

「何考えとるのか知らんが、さっさと着替えんか。後10分しか待たんぞ」
「ハイ?」
「お前なぁ・・・。まさか忘れたと言うんじゃなかろうな。今日明日、泊まりがけで大阪の学会まで付き合えと言っておいただろうが」
しまった・・・・。
「あれ、今日でしたか・・・」
って、今日みたいですね・・。

「何をすっとぼけたことをぬかしておるんだ!良いからさっさと着替えてこい!」

「け、血圧上がりますよ」
「清四郎!」
「ハイハイ」

はぁ・・・。せっかく出かけようと思ったんだが・・・。
まぁ向こうから電話入れておきますかね。
声も聞きたいですし。

フっ。
まさか、こんな風に思うようになるとはねぇ。
でもなかなかいいもんですな。こういうのも。



2004年2月14日(土) No.18

僕も結構単純だな。
「―――あぁ、じゃぁ。おやすみ」

フフン。悠理のヤツ可愛いじゃないですか。
"別に用事なんてないんだけど、なんとなくな"だって?
きっと顔、真っ赤だったんでしょうねぇ。

でもやっぱりこっちからもっと早くかければ良かったな。
声が聞けただけで、こんなにも気が晴れる。
昨日まさか、酒の席まで付き合わされるとは思ってなかったし。
今日は今日で、常に誰かいるし。
ふぅ。親父も全く妙な世界にいますよねぇ。
やっぱり僕には医者の世界は向いていないのかもしれないな。鬱陶しくて仕方がない。

「悠理君か?今の」
「えぇ、そうですよ」
「ほお〜♪」
「なんですか」
「いや。お前にもそういう普通の感覚があったんだな、と思ってな」
「どういう意味ですか」
「なぁに。気にするな」

なんだって言うんだ。ニヤニヤして。

それより土産物、明日渡そうと思っていたんだが、帰ったらすぐに持って行こうか。
いやそれよりも羽田に着いたらそのまま直接行ったほうがイイな。
頼むからちゃんと家にいてくださいよ。
まぁ、こんな時間だし、大丈夫だとは思いますけどね。

IN 伊丹空港 PM 20:05



2004年2月15日(日) No.19

うーむ・・・・。
避けられてる気がするのは、気の所為か・・・?
昨日は昨日で家に行ったらいないし、携帯も繋がらないし。
話をするのも目も合わさなければ、ろくに会話もしないで逃げるし。
昨日、あの電話の時は特に怒ってる様子も、怒らせたような事もなかったんだが。
あの後何かあったんだろうか。

一体、何処に行っていたんだ。

2004年2月16日(月) No.20

結局。
また一睡も出来なかった・・・。
はぁ。一言訊けばいいだけの話なんですけどねぇ・・・。
どうしてそれが出来ないんだか。
でも今日はなんとかしないとな。
これじゃ、身が持たない。
それに、あいつのあんな顔、もうこれ以上見たくない・・・。

「悠理」
「な、何・・・」
「少し話があるんだが」
「・・・・・うん」

―――――――――――

「何か、怒ってますよね」
ふたりきりで話せる場所といえば、ここしか思いつかなかった。
「―――怒ってるのは、お前だろ?」
体育館の裏だなんて、早々誰か来る場所でもないし。
とにかくハッキリするまで誰の邪魔も許さな・・・・え?
今、コイツはなんと言った?

「お前あの日の晩、うちに来てくれたのに、あたい、い
なかったから・・・」

コイツは一体いつからこんな・・・・・。
「ちょっ!せ、清四郎!!」
離れようったってそうはさせませんよ。
離せるもんですか。
このまま体の中に取り込んでやりたいぐらいですよ。

全く。なんてカワイイ事言うんですかねぇ。
家にいなかったことを怒ってる?僕がですか?
怒ってるというより心配だったんですけどね。
でも、そんなに僕のこと気になりますか♪

「怒ってなんていませんよ。あの晩は僕が勝手に行っただけですからね。驚かせようと思って敢えて連絡しなかったんですよ」
「・・・・」
「僕の方こそ、悪かった」

って、そんな珍しいもの見るような眼で見なくても。
僕だって悪いと思ったらちゃんと謝りますよ。

それにしても・・・・。
あんまりこの体制で見つめられると、キスしたくなってしまうんですけどねぇ・・・。
でもここでそんなことすれば、間違いなく顔に痣ができるんでしょうなぁ。

ま、楽しみはもう少しとっておきますか。

2004年2月17日(火) No.21

フム。
まだ何か悩みでもあるんですかねぇ。
とりあえず誤解は解けた筈なんだが・・・・。
昨日もあの後、まだ様子が少しおかしかったんですよね。
でも何も言わなかったし、ただ照れている所為だと思っていたんだが・・・。
とにかく今度の週末でも、何処かに誘ってみようか。
ふたりで出かけて、その時にでもさりげなく訊いてみるのがいいかもしれないな。
昨日みたいに改めて呼び出せば、また不安がるだろうし。

今度の土日は・・・あぁ、大丈夫だ。
今度こそ何の予定もないな。
さて、じゃぁ何処に行くとしますかねぇ♪


2004年2月18日(水) No.22

・・・誰もいませんね、っと。
やっぱりまだ様子がおかしいな。
話をするようにはなったが、目をあわせない。
また知らない間に、何かやってしまったんだろうか。

・・・思い当る節が多すぎるな。

とにかくそれは週末だ。
今訊いて答えるぐらいなら昨日、話しているだろうし。
とりあえず笑顔を取り戻すのが優先事項ですよね。
さぁ、乗ってくれますかね。
一晩かけて考えたとっておきのプランに。

「悠理」
「な、何・・」
なんだか警戒されているというか、いつでも逃げられる体勢を取られている気がする・・・。
「今度の土曜日なんだが、時間ありますか?」
「へ?」
「ふたりで出かけないか。先週は大阪に行く事になって何処にも行けなかったし」
って、悠理?今、顔が強張りませんでした?

「・・・・・・なんで?」
「は?」
何がだ?というか、どうして俯いてしまうんだ。
「なんで、誘うんだって訊いてるんだよ・・・・」
「なんでって・・・そりゃ、デートしたいじゃないですか」
良かった誰もいなくて。
こんなセリフ、人前じゃ絶対言えませんよ。特にあいつらの前じゃ。
でも正直な気持でもありますからね。
「デート・・・?」
お、やっと顔を上げてくれましたね。
呆けた顔なのがちょっと気になるが。
「悠理の大好きなディズニーランドなんてどうです?朝から晩まで楽しみませんか」
一晩中考えた挙句、思いついたのがこれだなんて自分でもどうかと思うのだが、悠理にとってはやっぱりここが一番いい気がする。
特に今みたいに塞ぎこんでいるような時は。
って、何故泣く・・・・。
「嫌、でしたか・・・。悪い、デートと言っても正直何処に行けばいいのかわからなくて。他にどこか行きたい処ありますか?」
まさか泣くほど嫌がられるとは・・・。
「違う・・・。違うんだ・・・・」
だから、泣かれると体が勝手に・・・・。

相変わらず小さい体だな。
でもなんだか寛げるんだから不思議としか。
きっと何があっても離せないし、誰にも渡せないな。
なんて、絶対言えないが。
「場所はともかく、デートはOKしてくれますか?」
いっそ本当にふたりきりになれるところにしようか。
ふたりでずっとこうしているのもいいかもしれない。

2004年2月19日(木) No.23

やっぱり。
結局は先週、一緒にいられなかった事で怒っていたんだな。
悠理も本当に可愛いトコがありますねぇ♪
ま、僕ももっと早く気付くべきだったな。

でももうあんな風に元気のない悠理を見るのは身が持たないし、これからは気を付けないと。


2004年2月19日(木) No.24

なんだか曇ってきてるな。
しかし確か明日の天気は晴れだったハズ。
・・・・今日の天気"も"晴れだったハズですけど・・・。

まぁ、悠理が晴れ女だし、大丈夫でしょう。

って、降ってきました・・・・?
イヤイヤ、でも今降れば明日にはイイ天気になるハ・・・・カミナリもですか?

ふ〜。仕方ない。
晴れたらディズニーランド、雨だったら・・・・どちらかの部屋でのんびりってのにしましょうかね。
悠理が納得するかどうかは別として。

2004年2月20日(金) No.25

日頃の行いですね。
まだ2月だと言うのに暑いぐらいだな。
でも晴れてよかった。
悠理も嬉しそうだし、やっぱり来て正解だったな。

「せーしろー!早く来いよお!」
「ハイハイ」

あいつのあんな笑顔を見るのは何時ぶりだ?
今朝はまだなんだか不自然なところもあったけど、今じゃすっかりいつも通りになってる。
ここで聞き出そうかとも思ったけど、止めにしておくか。
せっかく、楽しそうだしな。

さてと僕も楽しみますか。
なんせ、初デートですからね。

2004年2月21日(土) No.26

フン。なかなか良く撮れて。
昨日は写真は全部悠理に任せっきりでしたからねぇ。
ちゃんと撮れてるか不安だったが、なかなか良く撮れてるじゃないですか。

ただ。
ミッキーだ、ミニーだって、キャラクターばっかりなのが気に食わないが。

どうして初デートだって言うのに他人の写真を一生懸命撮るんですかねぇ。
そりゃ、初デートと言ったって今までふたりで出かけたことぐらいないわけじゃないが。
それにしたって、僕の写真が一枚に?ふたりプラスドナルドダックで撮った写真が一枚。あとは、最初にアイツがはしゃいでるところを撮ったのが・・・・全部合わせて10枚もないなんて。

ふ〜。
まぁ、仕方がないかもしれないな。
手を繋いだだけで、殴りかかってくるぐらい照れていましたからねぇ。
あんなに照れるんじゃ、恋人同士らしい写真なんて、これから先も暫くは期待できそうにないか。

と、そろそろ来る時間だな。

・・・・・・・。
「僕よりミッキーやミニーの方が好きなんですか?」
とでも、問い詰めてやりましょうかね。
きっと真っ赤な顔で慌てるんでしょうね〜♪

2004年2月22日(日) No.27

春ですねぇ。
金曜のアレはなんだったんだか。
異常気象の一端だったんですかねぇ。
まぁ、そんな事、どうでもイイですけどね。
しかしこれだけ天気もよくて暖かいと、悠理じゃないが眠くなりますな。

・・・そうだな。
今度の週末もこんな天気だったら、またふたりで何処かに出かけてみるか。
今度は弁当でも持ってドライブもイイですねぇ・・・・ってその弁当は誰が作るんだ。

まぁ、弁当はともかく、ドライブは名案でしょう♪
行き先は何処がイイだろうか。
いくら暖かいとは言っても海はまだ早いでしょうしねぇ。
あとで悠理と相談しますか。

2004年2月23日(月) No.28

今に始まった事じゃないが。
こいつはすぐに態度に出るな。
何が「なんでもない」だ。
思い切り、何か企んでいるじゃないか。

こんな顔ってことは、・・・またどうせろくな事じゃないんでしょうねぇ。
何を仕掛けて来るんだか。
まぁイイ。
暫く、何も言わないで様子を見る事にするか。
理由はともかく、楽しそうですからね。

それよりも、週末の予定だ。
昨日さっさと帰ってしまうから、予定を訊く事すらできませんでしたからねぇ。

もしOKなら、今日の放課後にでもふたりでどこかで計画を立てるってのも、イイかもしれないな。
2004年2月24日(火) No.29

僕だって男なんですけどねぇ。
良く食べますねぇ、相変わらず。
昨日も週末の打ち合わせだったのか、食事をしに行ったのかわからなかったし。
そういや、ディズニーランドでもとりあえずなにか食べ物は持ってたな。

「ちょっと、あんた食べすぎじゃない?」
「ほんはこほはいひょ」
「食べ物が口に入ってる間は、喋るのお止めなさいな」

まぁ、いいんですけどね。別に。
この食べっぷりも魅力といっちゃぁ魅力なんですから。

でも、偶にはムードも・・・って、こいつには必要のないものだったか。
必要ないというより、関係ない、ですか?
そんなもの最初っから頭にないんでしょうねぇ。
えぇ、わかってましたけどね。
僕だって、あまり必要ないと思ってましたし。
でも、ふたりでいるようになって、いや、昨日のあんな表情を見て、考えが変わりましたよ。

『無理にでも作らなくては』とね。

せっかくいい雰囲気だったのに、全く。


まさか、ラーメンの屋台の声に負けるとは思いませんでしたよ。



2004年2月25日(水) No.30

予定変更か。
『悪いね、こんな時間に。寝てたんじゃないかい?』
「いえ、大丈夫ですよ。まだ10時じゃないですか」

なんだ?豊作さんらしくもない。
なんだか、妙に焦っているな。
ま、真夜中と言う訳じゃないにしろ、こんな時間に僕に電話してくるぐらいだからな、何かあったのはあったんだろうが。

『今度の週末なんだけど、時間ないかな。急で悪いんだけど、どうしても僕の代わりに出て欲しいパーティーがあるんだ―――』

−−−−−−−−−−


「―――とりあえず明日、僕の方から悠理に話しますよ」
『大丈夫かなぁ・・・。ただでさえ予定変更になって怒りそうだけど』
「もしどうしても嫌だって言うんなら、無理強いはしませんから。それに出かけるのはいつでもできますしね」
『本当にいつも家族揃って、迷惑かけるね・・・・』
「とんでもない。それでは、失礼します」


ふむ。おじさん、またおばさんの事、怒らせたのか。
今度は何したんでしょうねえ。
それにしても、そのおかげで・・・まぁ、悠理からしたらその「所為」でなんだろうが、パーティーですか。
豊作さんも大変ですねぇ、おじさんの代わりにホワイトハウスの晩餐会だなんて。
疲れるんでしょうね・・・・同情してしまいますよ。

ともかく、僕もできるだけのことはしないといけませんね。
一応、豊作さんの名代だからな。

まずは悠理の説得か。
嫌がるでしょうねぇ、いつものよりビジネス寄りのパーティーらしいし。
でも豊作さんの名前を出せば、なんとかなるか。
悠理もおじさんの代わりに豊作さんが渡米しなきゃいけないことはわかってるだろうし、かといって本来、出なくてはいけないパーティーをすっぽかすわけにはいかないという事もわかってるだろうからな。

とりあえず、明日だ。



2004年2月26日(木) No.31

冗談じゃない。
嫌がるとは思ってましたけど・・・。
そこまで膨れなくても。

「仕方ないじゃないですか。穴を開けるわけにはいかないと言われれば。豊作さんにとって大事な集まりらしいんですよ」
確かに悠理にとってはなんの面白味もないパーティーでしょうけど。
でも、ふたりで出かける事には違いないんだし、何より、世間一般では父親だけではなく、兄だって妹の恋人には手厳しいもんなんですよ?
それなのに、豊作さんは僕を頼りにしてくれて。
それって認めてくれてるって事じゃないですか。
僕だってその期待に充分応えたいですよ。
これからも一緒にいるために。

「とにかく明日の予定は変更です。ドライブは、ほら、明後日にでも」

パーティーにふたりで参加だなんて、滅多にあることじゃありませんからね。
それに元々、明後日だって、また撮った写真をふたりで見る予定だったんだ。
それが一日先延ばしになるって事は、またふたりでいる時間ができるという事。

「いつものようなパーティーじゃありませんからね。仕事絡みだし、大人し目の恰好にしてくださいよ」
なんて、偶にはシックに決めた姿も見たいだけだったりも―――
「あたい、行かない」
「え?」
「あたい、パーティーもドライブも行かない。どっちもヤダ!」
「悠理?」
「今のお前、めちゃくちゃ楽しそうだよな!それならもうずっと兄ちゃんの手伝いばっかしてろよ。どうせあたいと何処か行くのなんて、面白半分の暇つぶしだったんだろ!」

・・・・ちょっと待て。
何を言ってるんだ、こいつは。
楽しそう?
えぇ、そりゃ、まぁ。デートなんですし。楽しいですよ・・・・ねぇ?
で、どうして"ずっと、豊作さんの手伝い"が出て来るんですか。
手伝いといえば、手伝いだが、代わりにパーティーに出るだけじゃないか。
それに、面白半分の暇つぶし、だと?
そんな風に思われていたのか?
面白半分で、ただの暇つぶしで、誘っていたと?
・・・・・・・・ある筈がないじゃないか。

「じゃ、じゃーな」


「悠理!」
くそっ!




2004年2月27日(金) No.32

疲れた・・・・。
ふぅ・・・。やっと終わりましたな。
豊作さんも、大変ですねぇ。あんな連中の相手をいつもしているだなんて。

仕事の話だっていうんならともかく、着飾って上品ぶってはいても、見事に他人への嫌味と妬みと愚弄の応酬ばかりだったからな。
医者の世界の派閥も理解できないが、やはり何処に行ってもああいう輩はいるんですなぁ。
悠理は来なくて正解だったかもな。あいつなら、自分とは関係ない人間の事でもそのうち手が出そうだ。
・・・・はぁ。今頃、どうしてますかねぇ。

僕の気持は、全くあいつに届いていなかったのか。
抱きしめた時、手を繋いだ時、ふたりでいる時。
あいつは、なにを思ってたんだろう。
ずっと僕の気持をあんな風に思っていたんだろうか。
僕があいつの気持ちを弄んでいると。

確かに言葉にしたわけじゃない。
言わなくても、わかっていると思っていた。

それがあいつを傷つけていたなんて。
―――とんだ思い上がりだったな。

会えるだろうか、これから。
会ってくれるだろうか・・・。




2004年2月28日(土) No.33

いるかな。
起きては、いますよねぇ・・・。
でも、はぁ。二時か。
寝てるかもしれないな。
それに流石に非常識すぎたかもしれませんね、例えこの家でも。
いや、しかし。
どうせ嫌われたのなら常識も非常識も関係ないか。
とにかく会ってちゃんと話がしたい。
ちゃんと、伝えたい。

2004年2月29日(日) No.34

愛してる。
とりあえず、部屋に入ることは許してくれるみたいだな。
顔は向こうを向いたままだが。

「座って話しませんか」
僕の言う事も、頭から拒否する気はない、と。
傍に行くのは・・・・。これも大丈夫だな。
でも、やっぱり顔は見せてくれませんか。

・・・・何から話せばいいんだろうか。
参ったな、ここへ来るまで気持を伝える事は決めていたが、どう話すか、なんて全く考えていなかった。
率直に言って、わかってくれるだろうか。
言わなくてもわかってくれていると思っていたんだ、なんて、でも言い訳にしか聞えないだろう。
いや、今となっては本当に"言い訳"にしかならないんだろうが。
それでも伝えればわかってくれるだろうか。

・・・賭けてみるしかないな。今までの自分に。

「悠理、僕は――――」


2004年2月29日(日) No.35

フフフン♪
可愛いですねぇ、全く。
「悠理」
「な、なに」
クックック。そんなに怯えなくても。
「あ・・・」
「いいー!言わなくていー!もうわかったから、やめろー」
おーおー、顔真っ赤にしちゃって。
「わかるんですか?で?晴れですか、雨ですか」
「へ?」
「だから、"あ"したの天気、ですよ」
「へ・・・・天気?」
「そう、明日の天気」
「知るか!」

"愛してる"って言うと思いました?
そう思うだろうなぁと思ってわざとどうでもいい「明日の天気」を訊いたのは否定しませんが。
でもね、言いませんよ。
あんまり普段から言い過ぎると、逆に、また信じてくれなくなりそうですしね。


2004年3月1日(月) No.36

良かったじゃないですか。
今度はどこに旅行してらしたんでしょうねぇ。
でもこれでおじさんも豊作さんも一安心だな。
悠理も、「ホント、傍迷惑だよな」なんて口では言ってたが、本当は嬉しいんでしょうねぇ。
弾丸のように帰っていったし。
・・・・どこかで食事でもして帰ろうと思ってたんですがね。
ま、仕方ありませんな。
明日にしますか。


2004年3月2日(火) No.37

ん?
なんだか・・・・いつにも増して照れている気がするのは気の所為か?
昨日までも顔を見れば真っ赤になっていたはが、今日は話すどころか近寄るだけでも茹蛸みたいになって。
これじゃまるで最初の頃みたいだな。
・・・ま、最初の頃と言っても、まだ3週間も経ってないが。

そう言えば、まだそんなもんなんですよねぇ・・・。
しかもそのほとんどは悠理にとっては"違う"らしいし。
あいつにとっては日曜日、29日から、と言う事になるんだろうか。
2月29日、ですか。
ま、バレンタインデーの前日から、というのよりはわかりやすいですな。



2004年3月3日(水) No.38

そうか・・・。
そう言えばあと10日でホワイトデーですか。
そろそろお返しの準備をしなくてはいけませんねぇ。
今年は、何個だったか・・・。
こういうのはいつまで経っても慣れませんよ。

でもまぁ、今年は少し楽しみでもあるか。
何を贈りましょうかねぇ、あいつに。
なんせ、初めてでしたからね、悠理から貰うのは。
思えば誕生日にだって"個人"でなにか贈ったことなんてなかった。
いつも"みんな"で、でしたしね。

さぁ、どうしようか。
あのチョコケーキには何も敵わないだろうが、僕なりに・・・。



2004年3月4日(木) No.39

う〜む。
あいつが欲しがるもの・・・・・。
食べモノ以外思いつかないってのはどういうことだ。
ダメだ。一晩中考えたのに、何も浮かばない。

大人しく素直に本人に訊いてみますかね。
下手なものを贈るよりもよっぽどその方がイイだろう。
それに、あいつは自分も貰う側だって事をすっかり忘れているみたいですしねぇ・・・。
なにが、「お互い毎年大変だよな・・・。誰だよ、ホワイトデーなんて作ったの」なんだか、全く。
自覚させるのにも、丁度いいし。

明日、この間行けなかったドライブにでも誘って、その時に訊いてみるか。

2004年3月5日(金) No.40

なかなか。
いい天気じゃないですか。
やっぱりもう春なんですねぇ。なんとなく暖かい。
海中公園だけで、あとは海沿いの道を景色を見ながら、なんて思っていたが、浜に降りて遊ぶのもいけそうですね。
今これだけ気持ちがイイってことは昼にはもう少し気温も上がるだろうし。
どうせ悠理も遊びたがるでしょうしね♪

さてと、じゃあ迎えに行きますか。


2004年3月6日(土) No.41

やれやれ・・・。
「はーっくっしょい!」

だから言ったんだ、風邪ひきますよって。
せっかくお袋も姉貴も出かけてて、ふたりきりだってのに。
これじゃちっとも、"そんな"雰囲気になんかなりゃしない。

「やっぱり今日は帰って寝てた方がいいんじゃないですか?」
「だーいじょうぶだって。・・鼻・・・だけだんだかだ・・」
その鼻がヒドイって言ってんですよ。
思いっきり鼻声じゃないか。

はぁ、こんなことなら無理にでも止めるんでしたねぇ。
ついつい強請られて浜に降りたのがまずかった。
朝はあれだけ気持ち良かったのに、それから陽が翳ってくるんですもんねぇ。
あの肌寒さの中、水遊びをすれば風邪をひくのも当然ですよ。

「ダメだ。やっぱり帰って寝てろ。熱が出たらどうするんですか」
「だいじょ・・・・っえっくしょい!」
「ほらみてみろ。酷くなってる」
「う〜・・・・」

今日は悠理の部屋で過ごしましょうかね。
このまま返してもどうせ大人しく寝てなんかいないだろうし。
それに、やっぱりまだもう少し一緒にいたいですしね。



2004年3月7日(日) No.42

治りませんなぁ。
「くっっしょい」
「やぁねぇ、風邪?」
「うーん、そうみたいなんだ。鼻だけなんだけどな」
「花粉症じゃねーのか?」
「だって、清四郎は風邪だって」
「「「「ふ〜ん♪」」」」

何なんですかねぇ、今のは。
まぁ、いいですけどね。どうせ楽しいんでしょう、僕達のことが。
何か言えば余計喜ばせる事になりそうだし、放っておくさ。

それよりもあの忌々しい鼻風邪だ。
あんなトコであんなくしゃみだなんて、二度とゴメンですよ。
この間のラーメンの屋台といい、本当にタイミングが悪い。
絶対にさっさと治してみせますよ。


2004年3月8日(月) No.43

土曜ですか。
「わかりました。――――えぇ、じゃぁ」

・・・んー。
まぁ、今回は特にまだ何も約束はしていないし、ちゃんと話せばこの間のような事にはならないだろう。
と言っても、元々この間は、"僕の態度"に問題があったようですしね・・・。

でも機嫌が悪くなるのは避けられないかもしれないな。
豊作さんの手伝いをする事自体も、あまり良く思ってないみたいだし。
まだあの"会長代理"の時の事を根に持ってるんだろうか。
あの時とは違うんですけどねぇ・・・。
僕だって反省ぐらいしますよ。

しかし土曜日は、仕方ありませんね。
この間のパーティー絡みの相手との会食だと言われれば、僕が行かないわけにいかない。

その代わり日曜日はずっと一緒にいよう。
ホワイトデーですしね♪

2004年3月9日(火) No.44

予想通り。
でもまぁ、あれぐらいで済んで良かった。
もっと悪し様に罵られるかと思ったが。
やっぱりこの間とは違いますね。
あれぐらいの嫌味の一つや二つ、全然我慢しますよ。
泣かれたり拒絶されたりすることを思えば、可愛いもんだ。
あれは、ホント堪えますからねぇ・・・・。
二度とゴメンですよ、あいつに辛い思いをさせるのは。

今一番怖いモノを訊かれれば迷うことなく答えられるんでしょうね。
「悠理に嫌われることだ」と。

・・・フ。
どこまでも惚れてますねぇ、全く。



2004年3月10日(水) No.45

買い物ですか。
まだ少し機嫌が悪かったが、可憐や野梨子がなんとか宥めてくれるでしょう。
今は僕が何か言うと余計やぶへびになりそうだしな。

それにしてもホワイトデーのお返しを買い行くなんていってたが、本当にちゃんとそんな買い物するんだろうか。
あいつの事だから自分の食べたいものや欲しいものばかりに眼が移ってお返しなんて選ぶのもままならないんじゃないか?
二人も大変ですねぇ・・・。

さてと僕もそろそろ行きますか。
おばさんに知られるのは気恥ずかしいが、一番信頼できる店ですしね。
だが、可憐やあいつらには黙っててもらえるよう一言言っておかなければな。



2004年3月11日(木) No.46

あぁ、みっともない。
「お疲れさん」
「全くよ。あ〜くたびれた〜」
「本当ですわ」
「ごめんー」

やっと終わりましたか、ホワイトデーも。
全く、なんて数だったんだ。
野梨子も可憐も毎年の事とは言え配るのまで手伝わされて、本当にご苦労なことですな。
しかし。
相手が女性ばかりとはいえ少し妬けるな。
二人の話だと、一応は悠理が選んだものらしいし。
尤も、自分が食べたいもの欲しいモノリストの中から選んだらしいが。
にしたって、やっぱり、ね。
・・・随分、料簡が狭いと思いますがね、自分でも。
でもこればっかりは仕方ない。
素直な気持なんだ。
ま、なるべく表面には出さないように心がけますがね。

「―――あれ?余ってる。・・・んー。魅録、お前食う?」
「クッキーか?そうだな、ってなんだよ、可憐」
「ん?どーした、野梨子も。顔色悪いぞ」

えぇ。心がけますよ。みっともないですし。


あぁ、みっともない。
・・・・みっともないが、仕方ない。

「ひっ!ゆゆ悠理!俺やっぱいいわ!それ自分で食え!」
「え〜いらないのか?これ美味いのに。清四郎、お前は食うだろ?」

・・・・・・食べますよ。もったいないですしね。
二番手ってのが気に食わないが。




「――――これ、さ。あのケーキ屋のなんだ」
なんて。

ますますもって、他の誰かにやるのは気に食わない。
だけど、ケーキじゃないからまだ今回は大目にみましょうか。
あのケーキと悠理の手作りは、僕だけにして貰いたいですけどね。



2004年3月12日(金) No.47

声だけでも聞きたいですねぇ。
「―――悠理、怒ってなかったかい?」
「そうですね、どうも僕が豊作さんのお手伝いをすることが気に入らないみたいで、むくれてましたが。でも、大丈夫ですよ」
「そうか・・・。実は先日から口をきいてもらえなくてね。何がそんなに気に入らないのかなぁ」
「本当に・・・」

あいつはまだ怒ってるのか。
豊作さんには責任はないだろう。
仕方のない事だったんだし。
それにしても、昨日はもう機嫌も直っていたし、怒りは解けたと思っていたんだが。
あんな可愛い事、言ってましたしね。
ホントに、あいつらがいなけりゃまた抱きしめてしまってましたよ。
今日も会いたかったんですけどねぇ。
・・・・電話だけでもすれば良かったな。

毎日会っていてもこれだなんて、重症だな。
ひと月前まではこんな自分想像も出来なかったが。
ま、こういうのをでも幸せって言うんですかね。

・・・・・くっ、照れるな。



2004年3月13日(土) No.48

敵わないな、絶対。
今日は何処へも行かず、のんびり僕の部屋で。
昨日の事が決まった時、機嫌直しの意味も込めて何処かに出かけようと思ったけど、悠理は首を横に振った。
―――「どうせその仕事って疲れんだろ。しょうがないからあたいがお前んトコ行ってやるよ」

だなんて、ホント素直じゃない。
顔はまぁ、真っ赤でしたけどね。

「――なんだよ」
「ん?」
「じっと人の顔見て。なんだよお。映画観ろよー」
「悠理見てるほうが面白いですから」
僕の悪いクセですよねぇ。
ついこんな事を言ってしまう。
でも実際楽しいんですよね、映画なんかよりもずっと。
映画見てなくてもストーリーがわかるぐらい、表情が変わりますからねぇ。
その表情と聞こえてくるセリフだけで、充分ですよ。
「映画観ないんならあっち向いてろよ」
それにこんな風にすぐに反応が返ってくるし。
「嫌ですよ。どうしてそんなあさっての方向向いてなきゃいけないんですか」
「じゃぁ、あたいの顔なんて見んな。このスケベ」
なんて、体ごと顔を背けられてしまった。
「映画観ないんですか?」
「お前があっち向くまで観ない」
お前が観たい映画だったんじゃないのか、全く。
そんなに嫌ですかねぇ、顔見られるの。
・・・じゃないか。それもあるかも知れないが、さっきの一言が気に触ったのか。
でもまぁ、向こうを向いてくれているのなら丁度都合が良かった。
「わかりました。じゃぁ、暫くそっち向いててくださいね」
「なんでだよ!」
だから向いてろってんだ。
「ハイ、ちょっとの間ですから」
「・・・・・なんか変なことすんじゃないだろうな」
・・・一体僕をなんだと思ってるんでしょうねえ。
「言う事を聞かないのなら、します」
って、そんな急いで向こう向かなくても。

まぁイイ。
「じっとしててくださいね」

映画を観終わったら渡すつもりだったから、本当に丁度良かった。
箱を開けた時の悠理の表情も見てみたい気もするが、やっぱりこういうモノは面と向かって渡すのはなんだか気恥ずかしいし。
せっかくリボンもかけて貰ったが、まぁ仕方ない。

さて、気に入ってくれますかね。


「―――また、不安にならないように」
なんて、本当は僕が不安なんだ。
こうして抱きしめてもさっきまでのようにずっと手を握っていても、こいつは一瞬体を強張らせる。
緊張してるんだとわかっていても、何処かで思う。
まだ悠理は僕のこと信じていないんじゃないか、と。
だから、指輪を選んだ。
僕が安心できるように。
外していない――僕を愛してくれているとわかるように。

・・・全く、僕はエゴの固まりだ。


「・・・・・・わかんないぞ。指輪があっても、またなるかもしれない」
どう、してだ・・・・。やっぱりまだ・・・。

「だって、お前の趣味ってあたいをいぢめる事だろ?このサド男〜」
なっ。さ、サドって。
・・・・・あ゛ぁ、そうですかっ。
なら不安にさせない程度に"趣味"を楽しませていただきますよ。
「ほお。言うようになりましたねぇ、悠理も。ついこの間までこうして抱きしめただけで真っ赤になって緊張していたくせに。随分余裕じゃないですか。もうくしゃみは止まりましたよね」

・・・・・ちょっと、やりすぎたか。
せっかくさっきまでもう緊張も解けていたのに。
そんなに固くならなくても・・・。眼も疲れるだろう、そんなに力いっぱい瞑ったら。
「眼を開けてくださいよ・・・悠理」

やっぱりまだ早いんですかねぇ。
へんにこの間未遂に終わってしまったから余計、なのかもしれないな。
・・・だけど、こんな表情されては、ね。

と思ったら、こいつはまた・・・。

「ホントに面白いな、お前は。よくもまぁ、この短時間にそれだけ表情がコロコロと変えられますね。でもいい加減落ち着いてくれると有難いんですが?僕もそろそろ限界なんで」
「限界ってなんだよ、限界って。大体好きで変えてんじゃないわい」
そりゃそうでしょうね。
でも、そんなトコも好きですよ。
「眼を閉じてくれますか?」
あぁ、本当に限界かもしれない。
不思議なものだな。ただ、皮膚と皮膚が重なるだけの事なのに。
「悠理・・・」

ただ、それだけの事なのに。

「―――うん・・・」

こんなにも、満たされるんだ。


2004年3月14日(日) No.49

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悠理嬢の場合
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