いつまでも、悩んでいるのは性に合わなくて、「家庭教師に」なんて来てみたはいいが、さて、どうやって切り出せばいいモノか。 大体にして、自分自身がどうしてココまで気になるかがわからないんだ。 だがこのまま何もしないでいれば、恐らく今夜も眠れないのだろうし。 全く、僕はどうしてしまったんだろうか。
それにしても、さっきからコイツ本当に何も聞いていないな。 そりゃせっかくの日曜日に勉強しろだなんて、なにも理由が思いつかなかったとは言え、僕も悪い事したなとは思うけど。 さっきからなんだか上の空だし、ソワソワと落ち着きはないし・・・。 もしかして、これから魅録とでも約束があるんだろうか。 だからこんなに落ち着きがないのか?
「悠理、聞いてるんですか?」 「え、あ、うん、聞いてる聞いてる」 なんて嘘、大嘘だ。 こいつの顔は、今始めて僕の声が耳に入ったという感じだ。 やっぱり何か別のことを考えているのか。 別の誰かのことを・・・。
「悠理」 「え。な、何」
―――やめるなら今だ。適当に話を逸らせ。
・・・・何を。どうしてやめるんだ。 「一昨日のことなんだが・・・」 「え」 やっぱり・・反応がありましたか。 「魅録が告白されたの、知ってますか」
訊きたくないのか?僕は。 どうしてこんな遠まわしな言い方をしているんだ。 ハッキリ訊けばいいことだろう。 そう、もうハッキリさせてしまえばイイ。
「あの日、悠理、部室に来なかったでしょう。だからまた僕の時みたいに、その場に居合わせたんじゃないかと思ってね」
目は口ほどにものを言い、ってことですかね。 眼だけどころか、顔全体ですがね、こいつの場合。 一気に緩みはじめたこの表情が、僕の想像を肯定していると言うことでしょうな。 「・・・・やっぱり、一緒だったんですか」 そして
「また、泣いたんですか」 「誰が?」
誤魔化す気ですか。そうですか。 まだ、知られたくないってことですか、魅録との事。 照れてるだけかもしれないですけど、随分薄情ですねぇ。 「誰がって、悠理がですよ。魅録が告白されている所に居合わせて、また、驚いて泣いてしまったんじゃないですか、と訊いてるんです」 「なんであたいが泣くんだよ、魅録が告られたからって」 おや?どういうことだ。 この表情、嘘をついているようには見えない・・・。 「だって悠理、僕の時泣いたじゃないですか」 「あ、アレはあたいだってよくわかんないって言ったろ。大体なぁ、魅録が告られたのだって、あたい今初めて聞いたんだぞ」 「え?」 まさか。 百歩譲ってあの日悠理があの場に居合わせなかったとしよう。だが、その後、一緒だったんじゃないのか。だからこそ、さっき何か思い出して、微笑っていたんだろう。
「あたい一昨日は、先公に捕まってたんだよ。お前が、あの日、追っかけてくるから・・・」 「は?」 「お前と鬼ごっこしてたって、怒られてたの!」 怒られてた?魅録と一緒だったんじゃないのか? だって僕は何も言われてないぞ。 「怒られたって・・・。アレで、ですか?フム、僕は何も言われてませんけどねぇ」 「やっぱり。ぜーったい、そうだと思ったんだ。だってあいつ、お前の事贔屓してるもん」 「あいつって、だれです?」 「英語の竹桜」 ・・・・あぁ、納得しました。あの化粧おばさん、ね。 確かにあの先生なら悠理だけを捕まえて注意するなんて、しそうな事だな。 どういうわけか、悠理のことを目の敵にしている節がありますからねぇ・・。
イヤ、それにしても、 「そうですか、怒られてたんですか」 なんだか、わかってみれば馬鹿馬鹿しいと言うか、悠理らしいと言うか。 そうですか、そうですか♪
でもまぁ、とにかくおかげで今日こそゆっくり眠れそうだな。 っとその前に、どうやら気が晴れて浮かれてしまったらしい。その所為で機嫌が悪くなってしまったコイツをなんとかしないとね。
|
|
|