「・・・僕、言いましょうか?」
呆然としている俺の背中から俺のまさに意思を汲んだかのような声がかかってきた。 読心術でも心得ているのだろうかと驚いて、俺は振り向き様に「へぇっ!?」と聞き返した。
ムクロ君が他意など全くなさそうに(当たり前と言えば当たり前)俺を見てる。
「・・・9代目は今此処におられませんし、綱吉君こういう場合如何すべきかまだ分からないでしょう?」
「そうだけど、でもムクロ君は・・」
「僕はこうしたナリですから、ファミリーの事は頭に入ってます。あ、勿論情報は漏らさないことが既に頭に入っていますから、捕まった瞬間に自爆する装置だってほら、一応・・」
「み、見せなくて良いから!見せなくて良いからっ!!」
ロボットはこうもオープンなわけですか製作者の皆様方!! わざわざ着込んだスーツを緩くして俺にその自爆装置とやらを見せようとしたので俺は必死に止めた。
だから ロボットなんて 認めたくないんだってばっ!!!
50度くらい話の方向性が変わったところでムクロ君はもう一度俺に言う。
「綱吉君の家庭教師を代えて貰う様に行ってきますね。」
「・・・あの。」
願わくばそのまま俺だって行って欲しいのだ。 そのまま行って俺はその内寝てしまって、気付いたら朝になってて、それから今度は優しい『ちゃんとした人』に教育兼護衛を頼みたい。 こんな人間ぽくたってロボットなんて嫌だし、感情なんか無いようなロボットみたいな人間だってごめんこうむりたい。
けど、俺の今目の前にいるこのムクロ君はどうみても人で、俺のことを最初に考えてくれる人で、俺は何とも言いがたい気分なのだ。 つまりそのまま行って下さい何て言うと俺の良心の呵責がこう、キリキリと痛んだり痛まなかったり。・・アレ。痛むのは胃が痛いのかな。
呼び止めたまま硬直している俺を不思議そうにムクロ君が見ていた。
「・・・俺が、例えば、断ったら、ムクロ君は、どこに・・行くの?」
「・・・どこ、ですか?」
「・・・何か仕事とか。」
「ああ、仕事ですか。僕が本来与えられた役目は9代目等の護衛ですのでその場合は護衛を。」
「・・・・そう。」
なら一安心。
「・・・じゃあ、雲雀さんは?」
「雲雀・・ですか。」
そうですねぇ、と考えている間にムクロ君の頭から何かを処理しているような機械的な音が聞こえたが其処は知らないフリをした。
「彼の役目は暗殺業でしたので恐らくそちらの方へ・・。」
「あんさつ・・・ですか!?」
「えぇ。」
「え、え、じゃあ俺に会う前からソレを・・」
「あ、いえ。雲雀は確かに昔からボンゴレのところで暗殺のイロハを叩き込まれていましたが兼用で10代目の教育も同じように叩き込まれていたのでまだ暗殺者として裏での活躍はしていません。一応リボーンさんからは教育を優先するということを仰せつかっていましたので。」
「・・・ってことは俺が断れば暗殺業ってことかぁ・・。」
「雲雀の事は気になさらずとも良いですよ。綱吉君はただ選べば良いだけ。」
アナタが部下のために苦しんだり悲しんだりしてはいけないんです。と、にっこり笑って俺にそうムクロ君は言う。 なるほど。この辺りがロボットなんだな、と俺は失礼ながら感心しながらもなんとなく寂しい感じがした。
「・・・分かった。」
「決まりましたか。」
「うん。でもやっぱ俺も行く。ムクロ君もついてきてくれる?」
ムクロ君はやはりにっこりと笑った。
「分かりました。案内します。」
その笑顔に俺もにっこりと笑い返しながら口を開いた。
「でも怖いから、明日で良いかな。」
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