1958年東宝作品。
東北地方北上川上流秘境の地で、眠りを覚まされた大怪獣バランが大暴れするという物語。 モノクロだが、それが却って独特の雰囲気をかもし出して、出来は悪くないと思われる。
テレビの「ウルトラQ」と似た雰囲気があるかもしれない。 また主演がその「ウルトラQ・変身」で巨人役を演じた野村浩三さんであることもどこか共通点があるかもしれない。
スタッフ 監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 脚本:関沢新一 原案:黒沼健 特技監督:円谷英二 音楽:伊福部昭
以上のとおり、東宝特撮としては、最高のメンバーである。
その他のキャスト 園田あゆみ 伊藤久哉 桐野洋雄 千田是也 村上冬樹 平田昭彦 山田巳之助 土屋嘉男 田島義文 瀬良明
とこちらもそうそうたるメンバーである。 「怪獣」としてのバランの怖さ、強さ、迫力は十分である。 造型は賛否両論であるが、トクタサツオはいいと思っている。
映画は自衛隊とバランの戦いがメインである。 この辺りの特撮、音楽も見事だ。
特に音楽は、オープニングの男声合唱はとてもいい。 タタタター、タタタタタターという旋律は後に「地球最大の決戦」のメインテーマへとアレンジされる。 バランと自衛隊の戦闘シーンに流れる音楽もまたすばらしい。
こちらは「宇宙大戦争」の戦闘シーンの音楽へとつながっていくのだ。 物語の発端から、展開に至るまでも明快だ。
だが後半だんだん息切れがしてくる。 この辺りが「ゴジラ」はもちろん、「ラドン」「モスラ」にも及ばないところで人気度もイマイチなところであろうか。
羽田空港での大暴れのシーンもかなり「ゴジラ」の流用フィルムが多くなってくるのである。 そして最後の倒され方も案外、あっけないのだ。
このような倒され方をした怪獣はあまり聞いたことがない。
ただこのラストの苦悶のシーンはまさに怪獣そのものである。 これがまさにすさまじい演技なのである。 本当に苦しんでいるという感じなのだ。
だから悪い奴だったけれど、却って哀れみを感じてしまうのだ。
スーツアクターはもちろんエース、中島春雄さん。 中島さんはゴジラの時も動物園で動物の動きを見て、勉強されたそうだが、 この努力が生きたのであろう。
「大怪獣バラン」怪獣映画としては、合格であろう。 観ても損はないと思う。
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