【キンブリー×部下】
「細いですね」 そう言ってキンブリー少佐は階段を下りる私の足を見た。今日は式典があったた め、スカート着用。そのためふくらはぎ少しと足首は露になっている。 「何がですか?」 たぶん、彼の視線からして『細い』とされたのは私の脚だろう。 分かってはいたが、それを敢えて自ら口にすることは躊躇われたので一応聞き返 してみた。 「足首ですよ」 「あ、足首ですか?」 まさかのピンポイント。ふくらはぎが細く無ければ足首だけ細くたってバランス が悪いだけだ。 「よくそんな足首で立ってられますね」 少佐の目はスタイルの良い女性を誉める時のソレでは無く、完璧に軽蔑と嫌悪を 感じさせるものだ。 「も、申し訳ありませんでした」 明日から牛乳を飲んで骨を太くしよう。こんな屈辱、もう二度と味わいたくない 。 「いえ、構いませんよ。身体的特性は貴女まで成長が済んでしまうとどうにもな りませんからね」 また棘のある一言。
『どうにもならない』私はそのまま何も言えず彼の背中を追い掛けた。
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【キンブリー×参謀/士官学校時代】
「君?」 少女に声をかけられた。今日は大事な式典の日なのに普通の軍服を着ている頭の おかしい少女だ。 彼女はベンチに膝を立てて座った状態で式典に向かう途中の私の軍服の裾を掴ん だ。 「士官学校に優秀な成績で入学したゾルフ=J=キンブリーくん?」 「………そうですが」 「今日はどうしちゃったのさ、そんな堅苦しい格好してさ」 「今日は大総統が士官学校を視察に来る日で式典が開かれるでしょう」 「あははは。高々大総統ぐらいでお洒落しちゃって」 「正装での参加を厳命されていたと思いますが?」 「おや?」 そう言って少女は自分の格好を見る。 「…………ねぇねぇ、キンブリーくん。そのコート貸してよ」 「貸したところでスカートでもなく、襷もしていない貴女には無意味では?」 「参ったな。今日こそ退学って言われるんじゃないかな」 「ああ、貴女は噂の天才児ですか。その頭の良さだけをかわれて最年少入学した が、兵学にも飽いて留年を繰り返した結果、私と同期になられた●=■さん?」 「よろしくねー」 欠伸を噛み殺しながら『よろしく』と言われても困る。 「そろそろ式典が始まりますよ」 「そうか。私はもう君と同期になったのか」 ベンチから飛び下りた彼女は式典とはまったく違う方向にポテポテと歩いて行く 。 「キンブリーくん、これからチェスでもどう?」 「式典だと言っているでしょう」 「『異端』らしさを発揮しなよ。良い子ぶってないでさ」 振り返った彼女の挑発的な笑みに思考が一瞬止まってしまう。 「考えること止め軍人の末路は悲惨だよー」
まるで、彼女の掌で転がされているような感覚だ。きっと目の前を歩く人間は普 通の人間とは違う世界が見えている。そう思うしかない程、彼女に自分の全てを 言い当てられる。 「そろそろ卒業しよーかな」
ゆっくりと式典とは真逆の方向に向かうその背中を無意識の内に追い掛けていた 。
ただ、彼女の見る世界に興味があった。ただそれだけだった。
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誤字脱字は許して下さい。脈絡の無さも許して下さい(涙)
二番目のはこの前書いたものと同じシリーズです。
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