鉄の扉を開いて、青空と白い雲が支配している屋上に出た。 冬の始まりの風が冷たく、そして心地良く頬に当たる。 「お邪魔しています」 屋上に漂う紫煙。その源にこの場では『異端』な青色の軍服が見えた。 「サボりか、マスタング。司法局にまで来てサボりとは、さすが常習は違うな」 「煙草を吸いたくなって、久しぶりに」 「風下で吸え」 運悪く、今日は司法着を着ていた。黒のベルベットに煙草の匂いがついたらきっと秘書官が怒り狂うだろう。 「閣下もサボりですか?」 「休憩だ」 「閣下も一本如何ですか?」 「結構」 「出世しきっても禁煙ですか」 「上に立ったからには様々な拘束がある」 「『出世したければ煙草を止めろ』貴女に一番最初に教わったことです」 「心掛けられていないな」 「まさか。心掛けているから軍部では吸わないんです」 「だからと言ってここで吸うとは脱帽だ」 「貴女に会いたくなって」 「それはそれは」 「右足、焼いても良いですか?」 マスタングの視線が私の歪に曲がった右足に突き刺さる。 紫色に染まった役立たずの足。切り落としてオートメイルか義足にしてしまったほうが良いと言われたがその気にはなれなかった。 付いていても害にならないのであればそのままにするつもりだった。それが私の愚かさの象徴であり、あの男の爪痕だったからだ。 「焼き落とすのか?」 「その痣を隠すように火傷の痕を付けたいんです」 「趣味の悪い」 「本当に。ですが、そうでもしない限り貴女は私を見てくれないでしょう?」 「見て欲しいのか」 「貴女ほどの美人を見たことがありませんから」 貼り付けた笑顔で心にもないことを言うこの男がヒドク愛しかった。 偽りは何よりの優しさだ。 「ありがとう」 「いいえ」 「さて、私はそろそろ戻るよ」 「私は暫くここでノンビリさせていただきます」 「ごゆっくり」 背を向けて歩き去る。 風が揺らした羽織から煙草の匂いが微かにした。
これは怒られる。
そう思いながら幾分か軽くなった気持ちで天気の良い空を見上げた。
----------------- 大佐夢が書いていたいと言う願望。 -----------------
キンブリー短編更新しました。 今度は×法務大臣
司法主人公が好きですね。私の中で司法は理知的で無慈悲でありながら確固たる正義と言うキラキラしたイメージがあります。
ですが、残念ながら私は理系です(笑)
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