二日酔い度 ★
鼻声がちっともなおらない。 食べ物の味が、通常の7割くらいしか感じてないような気がする。 酒を飲んだら一瞬、頭がクラクラ〜とくる。 物事を判断する能力も、ちょっと鈍い。 要は風邪なのだが、私の風邪はいつもだいたい熱がバーン、と出て、病院の薬飲んで寝たらおしまい。というパターンなのに、今回はおかしい。 誕生日前なので、体力を温存しとこうと思うのに、朝はわりと早く目が覚めてしまうし。 こんなノロノロした頭のときが、私はいちばん哲学的になる。 適度に二日酔いのときもそう。 なんだか体はしんどいのに、脳内はいろんなことを考えている。 最近、私が発見したのは、『タイプはずれが本命の法則』である。 ま、これは簡単に言えば、いつも従順でおとなしい女ばかりとつきあってた男が、一回やかましくて我がままな女とつきあうと、ちっともタイプではないのに、どんどこ底なし沼にはまっていく、実はそれが本命だったのである、という法則である。 私はもともとデブ専だった。 まぁ私の恋のアルバムは、メタボリックな男の連続である。 上に乗られたら窒息しそうなくらい重たいのがいい。 それでいて筋肉質であらねばならないのである。 マメで身軽で、小回りのきくデブが有難い。 顔については、昔ヤセてたときははたぶん男前だっただろうな、と思わせてくれたらよかった。 冬でも汗かきだけど、見てて気持ちいいほどよく食べるし、なんだか温厚そうに見えるし。だからいいよね。おデブの男は。
でもでもでも。 彼の裸を見たとき、あまりの美しさに私は見とれてしまった。 彼はほぼ毎日筋トレを欠かさず、お腹が出ないように気をつけていた。 一朝一夕にはできない美しさ、というやつだ。 健全な精神は健全な体に宿る、とうのもあながち嘘ではないのだな、と思った。私は今まで男のからだ、というのを見たことがなかったのだ。 私はほれぼれと全身を見つめ、ふらふらと風呂場までついて行き、シャワーを浴びるのを眺めていた。 お湯がはじいて玉になる、その玉の均等さも絵に描いたようだ。 鍛えるとお尻ってキュッとなってんのね、鍛えると腕ってこんなに筋が出るのね。野性的なのね。 彼の意思も強さも生き方も、その肉体で体現されてたようだ。 なんだあの思うがままのぶよぶよだったヤツらは。 理性がないのか、理想がないのか。 今となってはちゃんと呼吸が出来てたのかどうかもわからない。 すごいな私、男の裸見ながらどんどん新しい発見するぞ。 しかし恐ろしいことに、私が許した細い筋肉はこの人一人だけ。 あとにも先にも一人しかいなかった。 そして、この例外のたったひとりの細い筋肉が本命だったのだ、と私は喜ぶのである。 ぽっちゃりした女の子が好きだったのに、痩せた女にはまったあなた、上品な女が好きだったのに、庶民的な女の子にはまったあなた、はっきり言いましょう。それが本命です。 あなたは自分の理想でも好みでもないところで、はじめてその人に恋をしたのです。 私のまわりでも「全然タイプじゃないねんけどな〜」と言いながらのほうが、みんな続いてるような気がする。
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