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チコの二日酔い日記
2008年2月
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タイプはずれが本命の法則
二日酔い度 ★

鼻声がちっともなおらない。
食べ物の味が、通常の7割くらいしか感じてないような気がする。
酒を飲んだら一瞬、頭がクラクラ〜とくる。
物事を判断する能力も、ちょっと鈍い。
要は風邪なのだが、私の風邪はいつもだいたい熱がバーン、と出て、病院の薬飲んで寝たらおしまい。というパターンなのに、今回はおかしい。
誕生日前なので、体力を温存しとこうと思うのに、朝はわりと早く目が覚めてしまうし。
こんなノロノロした頭のときが、私はいちばん哲学的になる。
適度に二日酔いのときもそう。
なんだか体はしんどいのに、脳内はいろんなことを考えている。
最近、私が発見したのは、『タイプはずれが本命の法則』である。
ま、これは簡単に言えば、いつも従順でおとなしい女ばかりとつきあってた男が、一回やかましくて我がままな女とつきあうと、ちっともタイプではないのに、どんどこ底なし沼にはまっていく、実はそれが本命だったのである、という法則である。
私はもともとデブ専だった。
まぁ私の恋のアルバムは、メタボリックな男の連続である。
上に乗られたら窒息しそうなくらい重たいのがいい。
それでいて筋肉質であらねばならないのである。
マメで身軽で、小回りのきくデブが有難い。
顔については、昔ヤセてたときははたぶん男前だっただろうな、と思わせてくれたらよかった。
冬でも汗かきだけど、見てて気持ちいいほどよく食べるし、なんだか温厚そうに見えるし。だからいいよね。おデブの男は。

でもでもでも。
彼の裸を見たとき、あまりの美しさに私は見とれてしまった。
彼はほぼ毎日筋トレを欠かさず、お腹が出ないように気をつけていた。
一朝一夕にはできない美しさ、というやつだ。
健全な精神は健全な体に宿る、とうのもあながち嘘ではないのだな、と思った。私は今まで男のからだ、というのを見たことがなかったのだ。
私はほれぼれと全身を見つめ、ふらふらと風呂場までついて行き、シャワーを浴びるのを眺めていた。
お湯がはじいて玉になる、その玉の均等さも絵に描いたようだ。
鍛えるとお尻ってキュッとなってんのね、鍛えると腕ってこんなに筋が出るのね。野性的なのね。
彼の意思も強さも生き方も、その肉体で体現されてたようだ。
なんだあの思うがままのぶよぶよだったヤツらは。
理性がないのか、理想がないのか。
今となってはちゃんと呼吸が出来てたのかどうかもわからない。
すごいな私、男の裸見ながらどんどん新しい発見するぞ。
しかし恐ろしいことに、私が許した細い筋肉はこの人一人だけ。
あとにも先にも一人しかいなかった。
そして、この例外のたったひとりの細い筋肉が本命だったのだ、と私は喜ぶのである。
ぽっちゃりした女の子が好きだったのに、痩せた女にはまったあなた、上品な女が好きだったのに、庶民的な女の子にはまったあなた、はっきり言いましょう。それが本命です。
あなたは自分の理想でも好みでもないところで、はじめてその人に恋をしたのです。
私のまわりでも「全然タイプじゃないねんけどな〜」と言いながらのほうが、みんな続いてるような気がする。



2008年2月19日(火) No.594

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