二日酔い度 ★
オレの名はジャック。 誰もそう呼ばないが、オレはオレをジャックと呼ぶ。 ヤツらがこのビルに越して来てから、オレの苦悩は始まった・・・・・。
着物姿の女がいったい何人いるのか、やたらエレベーターを行ったり来たりしている。一瞬、和装バーなのか?と思ったがドレスの女もいるので違う。 やがて女達は酔っ払いの客を乗せて騒がしく降りてくる。 何度か見るうちにやっと、挨拶に来た女がどれかわかった。 どれほど化粧をしているのか、あのときとはまるで別人になっていた。 サルはチーフ的な存在だろう、ひっきりなしに買い物にパシっている。 オレはだんだんイヤな予感がしてきた。 3階から降りてくる人間達の酔っ払い方が尋常ではない。 そしてその予感は当たった。 エレベーターが開き、客が降りてきてオレの店のドアを開けた。 「そこ違うよ〜」と笑って制する女の声。 タヌキ女め。 1日に何度か間違ってドアを開ける。謝罪もない。 わざとやってるのかと言いたくもなる。 ガラスにもたれてうだうだとオレの店の前でしゃべっている客と女。 バンバンバン、とガラスを叩く女。 「やっかいなのが引っ越してきたね〜」と客に言われ、オレは 「動物園か、幼稚園ですかね」とジョークを言うのもやっとだった。
そしてヤツらがオープンして3日目だったか。 いつか来るかもしれないとは予想していたが、招かざる客が来た。 客も引けてオレは一人小説を読んでいた。 ヤツらが来る前に3階に入っていた、Bという店のチーフの男と、タヌキ女が一緒に入ってきた。 オレは瞬時に入れるわけにはいかない、と判断した。 チーフは知った男だが、タヌキ女にオレの酒を飲ませるわけにはいかない。 君一人ならいいけど、と男に言うと何でですか!とくってかかってきた。 理由など言う必要はない。 とっとと出て行ってくれ!と心の中で叫んだ。 男とタヌキはおとなしく出て行った。 そしてその直後も、やっぱり酔っ払いがドアを開けやがった。
オレのドアに手を触れるな!!!!!
タヌキはすぐ謝りに来たが、完全に無視してやった。 こっちが少しでも折れる素振りを見せて、図に乗ってこの先酔っ払いに出入りされたらたまったもんじゃない。 ここはオレの聖域だ。 この空間を守れるのはオレ自身だ。 しかし、オレを完全に憤怒させる出来事がまだ待っていたのだった・・・。
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