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堕天王の逝く道
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連載小説だけで
調子があんまり良くない。
今日は夜勤なので、小説だけ置いていきます。
では。
由紀子・夏樹編 1〜12話
http://www5f.biglobe.ne.jp/~pfive/tyouhen/yukine1.html
13話
http://diary5.net4u.org/scr3_diarys.cgi?action=article&year=2007&month=8&day=20&cat=2714datenou
14話
http://diary5.net4u.org/scr3_diarys.cgi?action=article&year=2007&month=9&day=28&cat=2714datenou
登場人物
http://www5f.biglobe.ne.jp/~pfive/tyouhen/cyara.html
由紀子・夏樹編 第十五話『赤鬼発現が招く災厄の足音』 その5
十二年前、一緒にいたいと願った彼女は、『借りは返したからね』と囁き、わずか十六歳の人生に幕を下ろした。絶望して張り上げた自分の声が、今でも耳にこびりついている。
『空音(そらね)・音子(なりね)、安らかに眠れ』。
碑にはそう記されている。誰が書いた言葉なのか、不愉快なので刀で袈裟(けさ)切りにした。重い音をたてて、碑が崩れ地面を穿(うが)つ。
「なにが安らかに眠れ、だ。自分達の手で、それを奪ったのだろうが」
吐き捨てるように言う。彼は、くだらない弔いの碑から彼女が亡くなった場所へと視線を移す。今や、草達が好き勝手に生え雑然としているが、彼女の亡骸を受け止めた場所は、その程度では風化しない。寂しげにその場所を見つめ、彼は呟く。
「音子、俺は帰ってきた。君が望んだ、紅(くれない)の呪縛を打ち崩すために」
気配を感じて、『誰だ?』と彼は問う。
朽ちた門柱の向こうから、オレンジ色の髪をした少女が姿を現した。赤いチャイナ服を身に纏った彼女は、小さく彼の背中に頭を下げる。
「数馬様の姿をご拝見いたしましたので、勝手ながらこの場所でお待ちしておりました」
「・・・で?」
数馬と呼ばれた彼は、いつでも斬りかかれるように体勢を整えた。背中を向けていようが関係ない。彼の実力なら、一呼吸で少女の首を刎(は)ねる事ができる。同時に彼は、隠しもせずに殺気をむき出しにしていた。しかし、その冷たくそれでいて凶暴な狂犬の牙のような殺気にも、少女はまったくといって怯(ひる)んではいなかった。
ただ、こう告げる。
「私は、茜様の飼い猫でございます」
数馬の表情が驚きに包まれる。彼には覚えがあったのだ。
「・・・音子が話していた。橙(たう)・・・なのか?」
「音子様が・・・音子様が・・・」
少女は嬉しそうにはにかむ。数馬も殺気を打ち消して、少女の方へ振り向いた。
「あ・・・ごめんなさい。私、橙です。今は、どこにも所属せずに独自に動いています」
「それは全てを知っている・・・からか?」
何も語らない橙。それが答えである。
「こちらには切り札があります。手を貸していただけませんか?」
「・・・話を聞こう」
そう口にした数馬の前で、橙は一枚のカードを取り出しその力を解放した。眩い光の中を舞うそれを見て驚く彼に、それは言った。
「あなたが数馬君ね。その瞳、彼に良く似ているわ」
失われた尊きそれは、生前と変わらない優しい笑みを浮かべていた。
2007年11月14日(水)
No.389
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