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堕天王の逝く道
2007年8月
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夜勤明け・・・眠たいでありまする
なんか、今回はいつもよりも眠たいなぁ・・・つれぇ・・・。

 由紀子・夏樹編 第十三話『覚醒予兆 前編』 その4

「・・・いた」
 思わず、力が抜けた。駅前のベンチに、三つ網の少女を発見する。間違いなく、氷女沙夜である。うな垂れているのは、暑さのせいだろう。櫻は思わず嘆息を吐いていた。コンビニでお茶を買い、櫻は沙夜の元へ向かった。
「近くにコンビニがあるのだから、そこで待っていればいいのに」
「あ、おはようございます」
 いつも通りの元気な挨拶。しかし、暑さで少し弱っている感じではある。
「はい、お茶。あげる」
 沙夜は、目を白黒させて『えっ?』と呟く。櫻にだって気恥ずかしさはあるのだから、間を空けられると辛い。
「いらないならいいわよ」
 と、下げると沙夜は面白いように慌てる。そんな様子がおかしかったが、笑うわけにもいかず、無表情を繕いつつお茶のペットボトルを彼女に投げ渡した。
「櫻さんから・・・」
 妙に嬉しそうである。お茶一つでこれだけ喜ばれると、櫻も扱いに困る。なので、少しでも話を逸らす事した。
「お嬢は?」
 お嬢とは、鏑木優子の事である。彼女の名前を口にする気は、さらさらない。
「まだ十分ほどあるから。いつも、時間きっかりなんですよ」
「五分前行動ていうものは、お嬢様の脳内にはないわけね」
「あはは・・・どうかな・・・」
 賛成するわけにもいかず、沙夜は曖昧に答えを濁(にご)らせる。
「そういえば、櫻さんは水族館に行ったことはありますか?」
「仕事でね。プライベートで行ったことはないわ」
「・・・私も、水族館は今日が初めてなんです」
 彼女の境遇からして、人が多い所にはいけないのは当然であるが、そこに意外性を感じてしまうのは、一重に付き合いが浅いため。櫻は、沙夜の能力の発動をまだ一度しか見ていない。学校でも、『鎮めの契り』のおかげで普通に暮らせている。ついつい彼女が特殊な能力者であることを忘れてしまいがちである。
「だから、とても楽しみなんです」
 沙夜は、はにかむ。彼女は、満面の笑みというのを浮かべない。今まで笑った事なんて、ほとんどなかったのだろう。櫻は気づいていた。こうやって素直に笑っているのは、自分の側にいるときだけだと。櫻や優子以外には、作り笑いを向けている。人に嫌われない演技だけなら、沙夜のほうが上なのかもしれない。
2007年8月23日(木) No.304

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