なにこの蒸し暑さ全開Day! 日干しとかそんな話じゃねぇ、いい感じに蒸し焼きにされる! この暑さで、3キロ痩せたよ。昔の体重に戻るには、あと7キロ減量しなきゃあかんわけで。最近、ご飯食べなくなったので、時期に戻りそうだぜ。 そんな暑いですが、今日は病院の夏祭り。休みなのに5時から出勤しろとか、ふざけんな。マジつれぇ。死ねばいい。公休が一日削れて、七日しかねぇんだぞ。貴重な一日潰されたら、六日しか休みがないじゃん。なに、この高度成長期時代の休み具合。残り公休数、『3』とか、『3』! とか、休ませろ。
由紀子・夏樹編 第十三話『覚醒予兆 前編』 その5
待ち合わせ時間きっちり。沙夜のいう通り、鏑木優子が到着する。白い日傘はいいとして、フリル付のロングスカートのいでたちに、思わず眉根を細める櫻。だが、相手にしても疲れるだけなので、さりげなく無視を決める。沙夜のほうは、何度か一緒に出かけているためか、特に気にした様子はないようだ。 「おはようございます。本当にいいお天気で、なによりです」 「暑いだけじゃない。誰かさんのおかげで、日干し寸前よ」 「わ、私のせい・・・ですか?」 泣きそうな顔で櫻を見つめてくる。この顔は、特別に苦手だった。 「時間きっかりにしか来ない、空気読めないお嬢様が悪いに決まっているじゃない」 「その忠告、肝に銘じておきますわ」 まったく動じず、笑顔で切り返してくる。どう見ても作り笑顔だ。沙夜と違い、優子は沙夜と一緒にいるときもそのほとんどが作り笑いである。それを理解したうえで付き合っているのだから、沙夜は偉い。ちなみに櫻は、その作り笑いが嫌いな最大の理由でもある。 「ではでは、チケットを渡しておきますね。無くしても対処は出来ますが、出来るだけ無くさないようにお願いいたしますね」 「うん・・・わぁ、凄い『無料チケット』って書いてある」 一般人には手に入れることが適わない特別なものに、沙夜は瞳を輝かせている。櫻の方は、受け取るなりため息一つ吐いていた。 「なんにでも手を出しているのね、鏑木グループは」 「えぇ、得になることであれば出資を惜しまないのが我がグループの方針です」 「うさんくさいわね、相変わらず」 得になる事であれば、どんなことでもする。そうとも取れる発言に、櫻はズバリそう言った。しかし、優子は顔色一つ変えなかった。 「ではでは、あと二分ほどで列車が出ますから、急ぎましょう」 『うん』と素直に頷き沙夜は、優子と共に駅へと向かっていく。櫻もそれに続こうとしたが、ふと視線を感じ、足を止めた。その様子に、沙夜が気付く。 「櫻さん・・・?」 「気にしないで」 立ち止まってすぐに感じていた視線は嘘のように掻き消えた。動きを見ただけで、感づかれた事に気づくとなると、こちらを見ていた視線はプロのものかもしれない。だが、監視される理由が分からない。 「・・・なにもなければいいけど」 嫌な感じが拭いきれない。晴れない顔で、沙夜たちを追いかけた。
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