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堕天王の逝く道
2007年9月
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随分と涼しくなりましたな
黒の契約者が終わりました。賛否両論ありそうな終わり方だったが、私はあれで満足している。銀の『私を一人にしないでぇ!』が印象的。いいアニメでした。


 由紀子・夏樹編第十四話 『覚醒予兆 後編』 その2


「桜花! お願い!」
 櫻の声が響くと、彼女の前方にピンク色の桜の花びらが広がった。無数の花びら。たったそれだけの、か弱い壁に見えるが、そうではない。呪力を帯びた、絶対障壁。多少の爆発程度なら防ぐ事ができる代物なのだ。そのため、再び放たれた銃弾は、花びらに包み込まれてそのまま大地にむなしく転がっていく。その間に櫻は、側にあった電柱の裏に姿を隠した。
「卑怯者め! 男ならガチで勝負に来い!」
「・・・予想外の展開だったりしますわね」
 愚痴る櫻のすぐ近くに、すっと姿を現す全長20センチほどの桜色の着物をまとった小さな女の子。長い髪の毛を高く結わえており、派手やかな金色の簪(かんざし)を挿している。それは絶世の美少女であるが、このサイズではどうしようもない。彼女の名は、『桜花』。櫻が契約している桜の精である。
「桜花、当主に連絡しといて」
 携帯電話を投げ渡す。それを受け取る桜花は、冴えない表情をしていた。
「戦うおつもりですの? 相手は、鉄砲持ちですよ。櫻さんは、今まで鉄砲とは戦ったことないのだから・・・」
「それでもやらないといけない! 分かるでしょ?!」
 桜花は、ため息を吐いた。やるといったらやる。ご主人の率直さに、桜花は呆れはするものの慈しみも感じていた。それだからこその櫻であり、主人なのだ、と。
「分かりますけど、心配ですもの」
「私は桜花を信じている。私と桜花なら・・・やれる」
「・・・いいですわ。櫻さんのことは心配ですけれども、ここで沙夜様を失うのはとても惜しいですから」
 渋々といった感じで、桜花は携帯を操作し始める。櫻は、電柱の影から少し顔を出す。直後、目の前でコンクリートが弾けた。思わず顔を引っ込めた櫻は渋い顔。
「正確無比、問答無用か。なら、一気にいくしかない」
 刀に力をこめ始める。刀身が、淡く光を放ち始めた。
「一・・・」
 ぐっと構え、いつでも飛び出せる姿勢を取る。
「二・・・」
 相手の気配を探る。しかし、それは適わなかった。相手は、足音どころか気配も完全に絶っている。もうここからは完全に賭けだ。
「三!」
 電柱の影から飛び出す櫻。少年は、こちらに向かってまっすぐに歩いてきていた様子で、距離も30メートルほど埋められていた。無慈悲な銃口が的確に狙いを定めてくる。それに恐れず、櫻は刀を大上段から振り下ろし、刀に込められた力を一気に解き放った。
2007年9月29日(土) No.341

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