黒の契約者が終わりました。賛否両論ありそうな終わり方だったが、私はあれで満足している。銀の『私を一人にしないでぇ!』が印象的。いいアニメでした。
由紀子・夏樹編第十四話 『覚醒予兆 後編』 その2
「桜花! お願い!」 櫻の声が響くと、彼女の前方にピンク色の桜の花びらが広がった。無数の花びら。たったそれだけの、か弱い壁に見えるが、そうではない。呪力を帯びた、絶対障壁。多少の爆発程度なら防ぐ事ができる代物なのだ。そのため、再び放たれた銃弾は、花びらに包み込まれてそのまま大地にむなしく転がっていく。その間に櫻は、側にあった電柱の裏に姿を隠した。 「卑怯者め! 男ならガチで勝負に来い!」 「・・・予想外の展開だったりしますわね」 愚痴る櫻のすぐ近くに、すっと姿を現す全長20センチほどの桜色の着物をまとった小さな女の子。長い髪の毛を高く結わえており、派手やかな金色の簪(かんざし)を挿している。それは絶世の美少女であるが、このサイズではどうしようもない。彼女の名は、『桜花』。櫻が契約している桜の精である。 「桜花、当主に連絡しといて」 携帯電話を投げ渡す。それを受け取る桜花は、冴えない表情をしていた。 「戦うおつもりですの? 相手は、鉄砲持ちですよ。櫻さんは、今まで鉄砲とは戦ったことないのだから・・・」 「それでもやらないといけない! 分かるでしょ?!」 桜花は、ため息を吐いた。やるといったらやる。ご主人の率直さに、桜花は呆れはするものの慈しみも感じていた。それだからこその櫻であり、主人なのだ、と。 「分かりますけど、心配ですもの」 「私は桜花を信じている。私と桜花なら・・・やれる」 「・・・いいですわ。櫻さんのことは心配ですけれども、ここで沙夜様を失うのはとても惜しいですから」 渋々といった感じで、桜花は携帯を操作し始める。櫻は、電柱の影から少し顔を出す。直後、目の前でコンクリートが弾けた。思わず顔を引っ込めた櫻は渋い顔。 「正確無比、問答無用か。なら、一気にいくしかない」 刀に力をこめ始める。刀身が、淡く光を放ち始めた。 「一・・・」 ぐっと構え、いつでも飛び出せる姿勢を取る。 「二・・・」 相手の気配を探る。しかし、それは適わなかった。相手は、足音どころか気配も完全に絶っている。もうここからは完全に賭けだ。 「三!」 電柱の影から飛び出す櫻。少年は、こちらに向かってまっすぐに歩いてきていた様子で、距離も30メートルほど埋められていた。無慈悲な銃口が的確に狙いを定めてくる。それに恐れず、櫻は刀を大上段から振り下ろし、刀に込められた力を一気に解き放った。
|
|
|